こちらは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が観測した土星の姿。2024年11月にウェッブ宇宙望遠鏡の「NIRCam(近赤外線カメラ)」で取得したデータを使って作成されたこの画像には、目で見える土星の“表面”の奥に隠された、土星の素顔とも言えるより深い部分の様子が写し出されています。
【▲ ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が2024年11月に観測した土星(Credit: Image: NASA, ESA, CSA, STScI; Image Processing: Joseph DePasquale (STScI))】
NASA(アメリカ航空宇宙局)によれば、この画像ではリボンのような形をした波状のジェット気流が確認できるほか、2010年代初頭に発生した土星の春における大規模な嵐(土星の1年=地球の約30年に一度発生)の痕跡とされる小さな斑点も見られます。
また、画像では両極付近が特徴的な灰緑色で表現されていることもわかります。これは波長約4.3μmの赤外線放射を捉えたもので、大気の高高度に漂うエアロゾル(微粒子)の層、あるいは磁場と粒子が相互作用するオーロラによる発光の可能性があるとされています。
輝くリングと多様な衛星
この画像でひときわ目を引くのは、明るく輝く巨大な環です。光を強く反射する水の氷で構成されている土星の環は、赤外線でもこのように際立って見えます。
また、画像にはEnceladus(エンケラドゥス)やDione(ディオネ)などの衛星も捉えられていて、少し視野を広げたバージョンには土星最大の衛星であるTitan(タイタン)も写っています。

【▲ ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が2024年11月に観測した土星、広視野バージョン(Credit: Image: NASA, ESA, CSA, STScI; Image Processing: Joseph DePasquale (STScI))】
Enceladusは厚い氷の地殻の下に液体の海(内部海)が存在するとみられており、生命探査の観点からも注目されている天体。Titanは厚い大気を持ち、水ではなくメタンが循環することで知られていて、NASAは2028年にTitanへ向けてドローン型の無人探査機「Dragonfly(ドラゴンフライ)」を打ち上げる予定です。
北極に潜む巨大な六角形
土星の北極には、1981年の惑星探査機「Voyager(ボイジャー)」による観測で見つかった六角形のジェット気流が存在します。今回の画像でもその輪郭がかすかに確認できます。
土星はこれから季節が移行し、北極はまもなく約15年間にわたる長い冬の暗闇に覆われます。そのため、この特異な六角形を地球から高解像度で観測できる機会は、今回の観測が当面のあいだ最後になる見込みです。
深層と表層の立体的な観測
一方、こちらは2024年8月にハッブル宇宙望遠鏡(HST)が可視光線で観測した土星です。ハッブル宇宙望遠鏡は太陽光を反射する雲層表面の美しい雲の模様を捉えました。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が2024年8月に観測した土星(Credit: Image: NASA, ESA, STScI, Amy Simon (NASA-GSFC), Michael Wong (UC Berkeley); Image Processing: Joseph DePasquale (STScI))】
NASAによると、ウェッブ宇宙望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡の観測で得られたデータを組み合わせることで、あたかもタマネギの皮をむくように土星の大気を高度ごとに切り分けて、複雑な気象パターンを立体的に理解できるといいます。天然の実験室である土星は、今後も驚くような発見を私たちにもたらしてくれることでしょう。
ウェッブ宇宙望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡が観測した2024年の土星の画像は、NASAから2026年3月25日付で公開されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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