記者会見するイスラエルのネタニヤフ首相(3月19日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2026年3月24日付)
イランとの戦争に突入することは、米国では人気のある決断ではなかった。だが、イスラエルでは紛争が圧倒的な支持を得ており、国民の80%以上が攻撃に踏み切る決断を支持している。
イランがイスラエルに対して存亡にかかわる脅威を突き付けているということをベンヤミン・ネタニヤフ以上に盛んに訴えた人はいない。
イスラエル首相はテヘランへの最初の空爆の翌日、現在の「部隊の組み合わせ」――米国の参加という意味――のおかげで「私が40年間やりたいと思ってきたことを実行できるようになった」と豪語した。
だが、現実に目を向ければ、ネタニヤフが長年待ち望んだイランとの戦争はイスラエルを安全な国にしていない。それどころか、イスラエルの長期的な安全保障を危険にさらしている。
イスラエルの安全保障が危うくなるワケ
これには主に2つの理由がある。1つ目は、何十年もの間、イスラエルの安全を保証する唯一最大の要因が米国における力強い超党派の支持だったことだ。
だが、まずパレスチナ自治区ガザで、そして今度はイランでネタニヤフ政権が取った行動が、この支持を大きく揺るがしている。
2つ目の理由は、イラン戦争がうまくいっていないあらゆる兆候が見えることだ。トランプとネタニヤフが口にしていた迅速で決定的な勝利は実現していない。
その代わり、戦争は米国とイスラエルが予期していなかった形でエスカレートし、イランがホルムズ海峡を事実上封鎖している。
先週末にイスラエル南部の街に着弾したイランのミサイルが証明したように、長い戦争はイスラエルの兵士と民間人にとって直接的な脅威となる。
イスラエルにとっては、極めて重要な米国との同盟関係がさらに損なわれることにもなる。
ネタニヤフの支持者らは、イランがイスラエルに対して存亡にかかわるリスクを突き付けていた以上、首相はほかの問題を無視してでも行動するしか選択肢がなかったと主張する。
だが、イスラエル自身の有力なイラン・ウオッチャーの一部は、イランの核開発計画が差し迫った脅威だったとの見方を否定している。
イスラエルの防衛情報機関でイラン研究部門のトップを務めたデニス(ダニー)・シトリノウィッツは、今や大半が死亡した以前のイラン指導部は「慎重で、計算高い」アクターだったと主張する。
こうした指導者は交渉の場で、イランは核兵器開発に欠かせない濃縮ウランの備蓄を大幅に希釈する用意があると示唆していたと報じられている。
シトリノウィッツの考えでは、「米国の交渉担当者はこのオファーの技術的、戦略的な意味合いを完全に理解するのに苦労した」ように見えた。
