
Linux上でWindows向けアプリを動作させるための互換レイヤー「Wine」のバージョン11で、パフォーマンスを向上させるドライバー「NTSYNC」が正式にサポートされました。これに伴い、一部のゲームのパフォーマンスが目に見えるレベルで向上したとして、テクノロジー系メディアのXDAが詳細を共有しています。
Wine 11 rewrites how Linux runs Windows games at the kernel level, and the speed gains are massive
https://www.xda-developers.com/wine-11-rewrites-linux-runs-windows-games-speed-gains/

Windows向けゲーム、とりわけ現代のゲームは高度な並行処理を実行していて、CPUは単一の処理を行うのではなく、レンダリング、物理演算、アセットのストリーミング、音声処理、AI処理などを同時に行っています。これらの処理は常に互いに調整し合う必要があり、WindowsではNT synchronization primitives(NT同期プリミティブ)と呼ばれる仕組みによって行われます。
これらはWindowsの中核となるソフトウェア「カーネル」の深部に組み込まれており、ゲームはこの仕組みに大きく依存しています。問題はLinuxには完全に同じ挙動をする仕組みが存在しないということです。Wineはこれらの同期機構を模倣してきましたが、その方法は理想的なものとは言えなかったそうです。
元々の方法では、処理間で同期が必要になるたびに、wineserverと呼ばれる専用のカーネルプロセスを呼び出していました。ところが、1秒間に数千回の呼び出しを行うようなゲームにとってこの処理は大きな負担となり、フレームのカクつきといった問題を生じさせました。

これまでいくつかの回避策が開発されましたが、いずれもWindowsの同期動作をLinuxで無理やり再現していただけで、特定のケースでは正しく動作しなかったといいます。そこで新たに登場したのがNTSYNCです。
NTSYNCは既存のLinuxの仕組みにWindowsの同期動作を押し込もうとするのではなく、Windowsの同期動作をモデルにした処理を直接行うものです。wineserverへの往復は不要になり、近似ではなく本来の挙動が実現されるということです。
その結果は驚異的で、開発者ベンチマークではビデオゲームの「Dirt 3」が110.6FPSから860.7FPSへと向上し、約678%の改善を記録。「バイオハザード RE:2」は26FPSから77FPSへ、「Call of Juarez」は99.8FPSから224.1FPSへ、「Tiny Tina’s Wonderlands」は130FPSから360FPSへ向上しました。
NTSYNCの恩恵を最も受けるのは、これまで処理に苦戦していたゲーム、特にマルチスレッド負荷が高くなっていたタイトルです。また、過去の回避策と異なり特別なパッチや設定が不要な点も大きいとされています。

XDAは「これこそがNTSYNCが重要である理由です。単なるパフォーマンス向上ではなく、Wineの同期処理が初めてカーネルレベルで正しく実装され、しかも誰でも簡単に利用できる形になったのです」と伝えました。
