G1での3勝目へ意気込むデビュー8年目の団野
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 春G1シリーズの水曜企画は「G1追Q!探Q!」。担当記者が出走馬の陣営に「聞きたかった」質問をぶつけて本音に迫る。「第56回高松宮記念」は大阪本社の田村達人(33)が担当。23年の当レースをファストフォースで勝ち、G1初制覇を飾ったデビュー8年目の団野大成(25)は所属する斉藤崇厩舎の管理馬ヤマニンアルリフラで挑む。「師弟の絆」「厩舎ゆかりの血統」「復調の兆し」の3テーマで聞いた。

 【師弟の絆】所属厩舎のヤマニンアルリフラとコンビを組む団野は昨年JRAで68勝を挙げ、キャリアハイを更新した。私生活でも、昨年9月に幼なじみと結婚。栄養バランスを考えられた料理など、さまざまな面で支えられている。「今年はもう一つ上のステージに行くため、競馬に対する考えを改めた」。競馬雑誌に馬の特徴や展開、そのコースを得意とする騎手や血統を書き込み、何通りも作戦を練る。大事にしていた感覚だけではなく、分析にかける時間を増やした。

 「今まで以上に真剣に、やり過ぎぐらい準備はしました」というものの、量をこなしても結果につながらないのが勝負の世界の厳しさ。今年の初勝利は1月24日で、その後も勝ち星は伸び悩んだ。「何をやっても裏目ばかり。週末に向けて、気持ちを高めても、レース後はへこんで折れての繰り返し。ずっともどかしかったです」と苦しい時期が続いた。

 3月中旬。勝てずに焦っている団野の姿を見て、声をかけたのが、師匠の斉藤崇師=写真=で「馬のリズムを大切にして乗りなさい」と言葉をもらった。そして先々週は2勝、先週は1勝をマーク。「自分よがりというか、考え過ぎるがあまり、慎重になりすぎていた。あの言葉で精神的にも楽になり、(今は)自分でもしっくりくる競馬ができるようになっている。今まで分析したことは無駄ではないと思うし、今後は感覚とデータのバランスを大事にしたい」と前向きさを取り戻した。

 これまで斉藤崇厩舎の馬で重賞3勝を含む58勝。「いつも自分のことを真剣に考えてくれて、駄目なところは叱ってくれる。感謝しかないです」と頭を下げる。師弟コンビで挑むG1。「先生も“一緒に勝ちたい”と言ってくれている。恩返しをしたい気持ちが強いです」と熱い思いを伝えた。

【厩舎ゆかりの血統】ヤマニンアルリフラのきょうだいはJRAデビューした全頭が斉藤崇厩舎に所属している。オープンまで出世した半兄ヤマニンサンパ、半姉ヤマニンアンフィルの初陣は3歳春の未勝利戦。重賞2勝の半兄ヤマニンウルスも常に脚元の様子を見ながらと体質が弱い血統で知られる。厩舎の所属騎手で日頃からきょうだいを見ている団野は「力は間違いないけど、この血統は若い頃、体が安定していない」と前置きした上で、「だからこそ大事に使われて(競走馬としての)息が長いのだと思います」と特徴を伝えた。

 アルリフラのデビューも24年1月14日の3歳新馬戦と遅めで、勝ち星を挙げられないまま未勝利戦が終了した。初勝利は格上挑戦で挑んだ同年12月ジングルベル賞(2勝クラス)だった。未勝利時代は「コンパクトで非力な馬」だったが徐々に体質が強化され、昨年7月の北九州記念で重賞初制覇。デビュー時の馬体重454キロから前走時が502キロと48キロも増加した遅咲きのスプリンターだ。「だいぶ筋肉がついて、短距離馬らしい体形。若い頃と比べて、かなり良くなった」。筋骨隆々の体はG1に入っても見劣らない。

【復調の兆し】 昨年7月の北九州記念以降の3戦は12→15→7着と不振が続いた。敗因は出遅れ。「ゲートが開く直前で少し動いてしまう癖がある。賢い馬でしっかり出そうとすると、それに感づくので、なかなかタイミングを合わせ切れなかった」と振り返る。

 前走シルクロードSは収穫たっぷりの3着。初めて着用したブリンカー効果もあり、五分に近いスタートを切った。「いつもトップスタートを切ろうとしていたことが逆効果になっていたので、あえて何もせず、出遅れなければ大丈夫という気持ちで臨んだ。今までと違い、ゲートが開くまで集中できていたし、あのスタイルがいいと思います」と接し方の正解を見つけた。

 道中は中団で脚をためる形で進め、直線は馬群の外からグイッとひと伸び。北九州記念のような鋭い末脚を見せた。「リズム良く運んで脚もたまったし、まともならいい脚を使えることは分かっていた。4角をうまくさばけていれば、1着まで可能性もあったし、ようやく本来の姿を取り戻したと思います」と胸を張る。

 過去10年の前走別で最多5勝を挙げるシルクロードS組。「乗りやすさと切れ味が、この馬の良さ。今回も末脚を信じて」とパートナーに全幅の信頼を寄せる。大舞台での勝負強さに定評がある鞍上は、23年に同ローテで挑んだ12番人気ファストフォースでG1初制覇を飾った。当時と同じ人気薄で再び波乱を起こす。

 ◇団野 大成(だんの・たいせい)00年(平12)6月22日生まれ、滋賀県出身の25歳。栗東・斉藤崇厩舎所属。19年3月にデビュー。21年日経新春杯(ショウリュウイクゾ)で重賞初制覇を飾った。G1は23年高松宮記念(ファストフォース)、24年マイルCS(ソウルラッシュ)の2勝。JRA通算4896戦360勝(うち重賞11勝)、1メートル62、47キロ。血液型A。

 【取材後記】団野は23年高松宮記念をファストフォースでG1初制覇。後日、取材させてもらった馬主の安原浩司氏は「12番人気でも、かなり自信がありました。パドックを見て、今までで一番いいな、と感じて。勝てるイメージしか浮かばなかった」と話してくれたのが強く印象に残っている。

 早いもので、あれから3年。団野に当時のことを振ると「実は僕も自信がありました」と語る。22年9月セントウルS2着で初コンビを組んで「能力の高さを感じた」一方で、「しまいの甘さ」が課題として見えた。管理する西村厩舎と相談して、調教に騎乗する際は前運動からキャンター、追い切りと意識的に馬の真後ろで我慢。競馬学校時代や北海道滞在時、お世話になったという藤沢和雄厩舎(22年解散)で教わった調教方法で「あそこで学ばせてもらったことが、全て生きました」と感謝。計画的な脚質転換が大一番ではまった。

 真面目で研究熱心な25歳。今年のヤマニンアルリフラもチーム一丸で課題をクリアしてきた。記念すべきG1初制覇を飾った高松宮記念。日頃の努力が報われてほしい。 (田村 達人)

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