ところが今回、研究チームはDART探査機が衝突する際に撮影した高解像度の画像を分析することで、その視覚的な直接証拠を掴んだ。いわば“雪玉”が命中した痕跡を見つけたのだ。

研究チームによると、DART探査機が捉えた元の画像には特に異変は見られなかった。ところが、岩の影や太陽光線の当たり方の条件などによる影響を補正した画像(アルベド画像と呼ばれる)を作成したところ、扇状に広がった明るい多数の筋が浮かび上がったという。

DART探査機が撮影したディモルフォスの元画像(上)と、光の反射率などの影響を補正した画像(下。アルベド画像と呼ばれる)。太陽などの光の反射率(アルベド)が高いと白っぽく見え、低いと光をよく吸収するので黒っぽく見える。

DART探査機が撮影したディモルフォスの元画像(上)と、光の反射率などの影響を補正した画像(下。アルベド画像と呼ばれる)。太陽などの光の反射率(アルベド)が高いと白っぽく見え、低いと光をよく吸収するので黒っぽく見える。

PHOTOGRAPHS QUOTE FROM 『EVIDENCE OF RECENT MATERIAL TRANSPORT WITHIN A BINARY ASTEROID SYSTEM』DART探査機が撮影したディモルフォスの元画像(上)と、光の反射率などの影響を補正したアルベド画像に見られる扇状の筋を着色して強調したもの(下)。

DART探査機が撮影したディモルフォスの元画像(上)と、光の反射率などの影響を補正したアルベド画像に見られる扇状の筋を着色して強調したもの(下)。

PHOTOGRAPH: NASA/JHU-APL/UMD

これこそが、“雪玉”の痕跡である。「わたしたちは当初、信じられませんでした。扇状の筋はかすかで、独特のものだったからです」と、今回の研究で画像処理などを担当したメリーランド大学の天文学研究科学者であるトニー・ファーナムは振り返る。

研究チームは当初、カメラに何か問題が生じていた可能性や、画像処理の過程に問題があった可能性を疑っていた。しかし、ディモルフォスに関する3Dモデルを改良していくと、この扇状の筋はいよいよ明確になっていったのだ。このため研究チームは、この扇状の筋が「光が生み出す錯覚」ではなく、現実のものであると確信するに至ったのである。

さらに3Dモデルを使って研究を進めたところ、ディディモスからのものとみられる物質は、秒速30.7cmほどのスピードでディモルフォスに衝突したことが示された。これは人が歩く速さよりもかなり遅い。

研究室での再現実験から見えてきたこと

この事象を再現して検証を重ねるべく、研究チームは研究室での実験にも挑んだ。着色した砂利を散りばめた砂の上に、ビー玉を落下させたのだ。

すると、ビー玉が飛び散らせた砂が砂利に止められたり、その間を通り抜けたりすることで、ディモルフォスに見られる筋とよく似たパターンが形成されることが明らかになった。石より緩やかに固まったちりの塊についても、コンピューターシミュレーションで同様の結果が示された。

研究室における実験の動画。ビー玉の落下によって跳ね飛ばされた砂が砂利に止められたり、その間を通り抜けたりして筋状の模様ができる様子がわかる。

Video: THE UNIVERSITY OF MARYLAND

「穏やかな衝突は、クレーターのような痕跡ではなく(跳ね飛ばした物質などの)堆積物をつくるのでしょう」と、論文の主著者でメリーランド大学天文学部と地質・環境・惑星科学部の兼任教授であるジェシカ・サンシャインは解説する。

今回の研究で明らかになったのは、二重小惑星が物質を“交換”している可能性があるなど、従来の想定よりも活動的であることだ。「(研究成果は)わたしたちの小惑星に関するモデルとプラネタリーディフェンスの手段を改良する助けになることでしょう」と、サンシャインは説明している。