
写真は取材に応じるトランプ大統領。2月13日、ワシントンで撮影。REUTERS/Kent Nishimura
[ニューヨーク 18日 ロイター] – トランプ米大統領と政権幹部らが、イランとの戦争報道を巡り、メディアへの圧力を強めている。政権側は「戦況は米国に有利に進んでいる」と主張するが、世論の反発は根強く、中東情勢は混迷を極めている。
トランプ氏は従来から自身に批判的な報道を敵視してきたが、ここへ来てメディアへの威嚇はかつてない水準に達している。報道の自由を重視する有識者からは、戦時下のジャーナリズムが萎縮しかねないとの懸念が噴出しており、憲法が保障する言論・出版の自由の危機を指摘する声も上がる。
3月1日公表のロイター/イプソス調査によると、米軍とイスラエル軍による2月のイラン攻撃を支持する米国人はわずか4人に1人。共和党支持層の4人に1人を含む回答者の約半数が、「トランプ氏は武力行使に前のめりすぎる」と懸念を示している。この戦争ですでに13人以上の米兵が命を落とした。
戦争報道に対する政権の不満が爆発したのは13日。ヘグセス米国防長官は記者会見でCNNを名指しし、政権がホルムズ海峡封鎖を巡り、原油輸送リスクを過小評価していたとする関係者への取材に基づく同局の報道を「全くのナンセンスだ」と一蹴した。さらにヘグセス氏は、CNNの新たな親会社トップとなるデビッド・エリソン氏が一刻も早く経営権を握るべきだとまで踏み込んだ。
パラマウント・スカイダンス(PSKY.O), opens new tabのCEOを務めるエリソン氏は、現在CNNの親会社ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD.O), opens new tabの買収を進めているが、同氏はトランプ氏の盟友であるオラクル共同創業者ラリー・エリソン氏の息子だ。
この会見に続いて、ホワイトハウスは「CNNは軍事作戦の圧倒的な成功をおとしめるために嘘をついている」と非難するメールを各方面に送付した。これに対し、CNNのマーク・トンプソン会長兼最高経営責任者(CEO)はロイターへの声明で「我々は自らのジャーナリズムを貫き通す」と反論している。
<フェイクニュースメディア>
米連邦通信委員会(FCC)のカー委員長は14日、Xに「『フェイクニュース』を垂れ流す放送局は、免許更新の時期が来る前に軌道修正するチャンスがある」と投稿し、暗にメディアをけん制した。この投稿には、同日早朝にトランプ氏が自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に書き込んだ「下劣な『新聞』やメディアは、我々が戦争に負けることを本気で望んでいる」という主張のスクリーンショットが添えられていた。
FCCは過去40年以上、テレビ局の放送免許を取り消した例はない。仮にトランプ政権が報道内容を理由に免許剥奪に動けば、報道の自由を定めた合衆国憲法修正第1条に基づく法廷闘争へ発展するのは必至だ。
さらに15日夜、トランプ氏はトゥルース・ソーシャルで、具体的な社名を伏せつつ「フェイクニュースメディア」がイランと結託し、米空母が炎上するAI生成画像を拡散させていると主張。「反逆罪に問われるべきだ」と語気を強めた。
確かにイラン国営メディアは「イラン軍が空母を攻撃した」との虚偽報道を行った。だが、欧米メディアがこれを事実として広めたわけではなく、むしろ複数のメディアは、炎上する船の映像が偽物であると検証する記事を掲載していた。
トランプ氏が米国の法律で最高刑が死刑となる「反逆罪」をちらつかせたことは、メディアへのどう喝が新たな段階に入ったことを意味する。同氏はこれまでもメディアを「フェイクニュース」「米国民の敵」と呼び捨てるだけでなく、個別の記者を「子豚」「卑劣なやつ」といった侮辱的な言葉で攻撃してきた。
ベセント財務長官はCNBCの番組で、主要メディアの戦争報道の根底には「トランプ大統領への嫌悪感」があると指摘した。
ホワイトハウスのウェールズ報道官も「大統領の言う通りだ」と声明を発表。「多くのメディアは、約50年にわたり米国人を殺害してきた政権を擁護する一方で、トランプ大統領や政権、米軍の信用を失墜させるために躍起になっている。全くの恥だ」と切り捨てた。
<トランプ氏は長年メディアを批判>
米コロンビア大ナイト憲法修正第1条研究所のエグゼクティブディレクター、ジャミール・ジャファー氏は声明で、大統領の最近の言動について「報道機関を自身の政治的・イデオロギー的な目的により従属させようとする、長年の試み」が先鋭化したものだと分析する。
「大統領が不正確で不公平だと感じる報道を批判するのは自由だ。だが、憲法修正第1条は、何をどう報じるかを決定する権利を報道機関に与えている」とジャファー氏は指摘する。「これこそが、憲法の揺るぎない土台だ」
一方で、政権のメディアへの圧力はある程度の効果を上げているとの見方もある。共和党の政治コンサルタント、ジャネット・ホフマン氏はその一例として、パラマウントが1600万ドル(約25億4400万円)の和解金を支払う決定をした件を挙げる。これは、2024年大統領選の民主党候補だったハリス前副大統領とのインタビューをCBSニュースが不正に編集したとして、トランプ氏が訴えを起こしていた問題だ。
ホフマン氏は「CNNのようにFCCでの合併審査や未解決の取引を抱える企業の多くは、政府からの圧力に弱い。そのため、一部の企業が自社の報道方針や取材戦略の見直しを迫られる事態も予想される」と推測する。
共和党の政治ストラテジスト、ジェイソン・ロー氏は、大統領の手法そのものには賛同しないとしつつも、メディアが米軍の戦果を過小評価しているというトランプ氏の不満には一理あるとみる。
トランプ氏に批判的な立場を取ることもあるロー氏だが、仮にイランとの戦争が比較的早期に終結し、結果的に成功だったと見なされれば、今回のメディアバッシングも「トランプ氏の過剰な言葉の暴走の一つ」として記憶されるにとどまり、最終的には「永続的な影響を残すことはないだろう」と分析している。
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab
