トップニュース米・イスラエルの対イラン空爆拡大、アラブ世界波及と米関与後退への懸念2026年3月16日未明、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ国際空港近くで、無人機が石油タンクに衝突して火災が発生し、黒煙が立ち上った。この影響で航空便は一時運航を停止した。(写真/AP通信提供)

2026年3月16日未明、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ国際空港近くで、無人機が石油タンクに衝突して火災が発生し、黒煙が立ち上った。この影響で航空便は一時運航を停止した。(写真/AP通信提供)

米国とイスラエルが2週間前、イラン本土に対して共同で実施した空爆は、当初ワシントンでベネズエラ大統領の拘束になぞらえた精密打撃とみなされていた。だが、いまや中東全域を巻き込み、ホルムズ海峡も封鎖される厄介な戦局へと発展した。衝突が第3週に入っても、終結や沈静化の兆候は見えていない。アルジャジーラによると、米国とイランの開戦以降、イランは中東の近隣諸国に対し、2000回を超えるミサイル・ドローン攻撃を実施し、その9割超がアラブ首長国連邦(UAE)を標的としていた。ロイターは、米大統領・トランプ氏がこうした展開について「こんなことになるとは思わなかった」と述べたと報じた。

米軍による連日の爆撃に直面するイランでは、最高指導者・ハメネイ師(Ali Khamenei)を含む要人が2月28日の第1波空爆で死亡したものの、イランは屈服しなかった。むしろ驚くべき耐久力を示し、ドローンとミサイルによる報復を、米軍基地が置かれたアラブ諸国に浴びせている。中東の近隣アラブ諸国は参戦していないものの、連日にわたりイランの空からの攻撃にさらされており、サウジアラビアとアラブ首長国連邦も17日にそれぞれ空襲を受けた。

中でもアラブ首長国連邦のフジャイラ(Fujairah)石油工業地帯は、2日連続でイランのドローン攻撃を受け、激しい炎と濃煙が立ち上った。カタール、サウジアラビア、クウェートも相次いで防空システムを稼働させ、空を飛び交う致死性兵器の迎撃に当たった。さらに注目を集めたのは、米大統領・トランプ氏が、イランによる湾岸周辺国への攻撃に「意外だ」との認識を示した点である。

しかし、ロイターが米情報機関に詳しい関係者の話として伝えたところによると、トランプ氏は開戦前から明確な警告を受けていた。にもかかわらず、これを重く受け止めなかった可能性がある。

湾岸諸国を襲う悪夢、中東全域に拡大するイランの報復

アルジャジーラによると、アラブ首長国連邦のフジャイラ石油工業地帯では14日、イランのドローン残骸が初めて落下して火災が発生したのに続き、17日にも再びドローン攻撃を受け、大規模な火災が起きた。フジャイラはドバイの東約150キロに位置し、UAEにとって極めて重要な石油輸出拠点である。フジャイラ政府当局は17日の声明で、エネルギー施設を狙った今回の攻撃による死傷者は出ていないと明らかにした。

2026年3月14日、テヘラン中心部をバイクで通過する2人の男性。背後には最高指導者ムジタバの大型ポスターが掲げられている。(AP)

2026年3月14日、テヘラン中心部をバイクで通過する2人の男性。背後には最高指導者ムジタバの大型ポスターが掲げられている。(写真/AP通信提供)

サウジアラビア国防省は、同国軍が東部地域でドローン6機を撃墜し、その後さらに2機を迎撃・撃墜したと発表した。クウェート国家警備隊もドローン2機の迎撃に成功したと明らかにしたが、標的や場所の詳細には触れていない。一方、アブダビのバニヤス(Bani Yas)地区では、防空システムが弾道ミサイルを迎撃した際に残骸が落下し、パキスタン国籍の男性1人が死亡した。

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アブダビのシャー(Shah)ガス田でも、ドローン攻撃によって火災が発生し、消防隊が消火活動に当たっている。アルジャジーラは、アブダビ当局が前日に、住宅地でロケット弾の直撃を受けたパレスチナ人男性1人の死亡を確認したと伝え、イランの攻撃が現地に深刻な混乱をもたらしていると指摘した。UAE領空も17日未明、数時間にわたり閉鎖され、ドバイ国際空港など交通の要衝で航空便の大きな混乱が生じた。

イランが近隣諸国を攻撃する理由

なぜイランは近隣諸国に矛先を向けたのか。アルジャジーラは、これらの国々に米軍基地が存在するため、イランにとって当然の攻撃対象になったと分析している。イランの激しい攻勢を受け、湾岸協力会議(GCC)は16日、「犯罪的なイランの攻撃」を強く非難し、領土防衛を誓った。サウジアラビア国防省も、同国軍が東部地域でドローン6機との交戦に成功して撃墜し、その後さらに2機を迎撃・撃墜したと発表した。クウェート国家警備隊もドローン2機の迎撃成功を明らかにしたが、攻撃目標や場所については具体的に説明していない。

だが、この「想定外」は本当に予見不能だったのか。ロイターが湾岸および中東地域に駐在する外交官6人の見方として伝えたところによると、米国またはイスラエルがイランを攻撃すれば、欧米の情報機関はいずれも、テヘランが湾岸のアラブ諸国を攻撃するのは不可避だと予測していた。ロイターはさらに複数の関係者の話として、トランプ氏が開戦前から「イランは中東諸国を攻撃する」と明確に警告されていたと伝えた。別の2人の関係者も、トランプ氏が行動前の段階で、テヘランが攻撃を受ければホルムズ海峡を封鎖する可能性が高いことを十分認識していたと証言した。

2026年3月16日、クルド系イラン反体制組織「イラン・クルディスタン闘争組織」のメンバーが、先週イランの支援を受けるイラク民兵の攻撃を受けた区域を示している。(AP)

2026年3月16日、クルド系イラン反体制組織「イラン・クルディスタン闘争組織」のメンバーが、先週イランの支援を受けるイラク民兵の攻撃を受けた区域を示している。(写真/AP通信提供)

ロイターによると、米イスラエル連合軍による対イラン戦争は第3週に入り、少なくとも2000人が死亡したが、中東の戦火はなお拡大を続けている。イスラエル軍は「イラン政権のインフラ」に対する新たな攻撃を進めていると主張し、同時にベイルートのヒズボラ拠点も空爆した。イラクの関係筋はロイターに対し、バグダッドの米国大使館が17日未明、ロケット弾と少なくとも5機のドローンによる攻撃を受けたと明らかにした。開戦以降で最も激しい攻勢だが、現時点で死傷者の報告はない。

米国とイスラエルはいずれも「イラン軍を壊滅させた」と主張しているものの、テヘランの低コスト・ドローンは依然として地域で猛威を振るっているようだ。イラン国会議長・カリバフ氏(Mohammad Baqer Qalibaf)は17日、イランの武器不足を巡る報道を否定し、「彼らはわれわれの火力が低下したと言うが、攻撃能力も経験も精度も高まっている」と述べた。カリバフ氏はさらに、地域の安全保障は地域諸国自身が構築すべきだと強調した。

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イランによって封鎖されたホルムズ海峡を前に、トランプ氏は同盟国に支援を求め、タンカー護衛のための軍艦派遣を要請した。だが、反応は冷淡だった。トランプ氏はホワイトハウスで、長年米国の保護を受けてきた一部同盟国がこの問題に「十分熱心ではない」と不満を示した。ドイツ、スペイン、イタリア、日本、オーストラリアなど米国のパートナー諸国はいずれも、海峡の再開通支援に向けて直ちに艦艇を派遣する計画はないと表明した。独首相・メルツ氏(Friedrich Merz)はベルリンで、「わが国には、基本法が求める国連、欧州連合(EU)または北大西洋条約機構(NATO)の授権が欠けている」と述べた。

2026年3月16日、インドのガス輸送船「シワリク号」がインド・ムンドラ港の液化天然ガスターミナルに到着した。(AP)

2026年3月16日、インドのガス輸送船「シワリク号」がインド・ムンドラ港の液化天然ガスターミナルに到着した。(写真/AP通信提供)

メルツ氏はさらに、ワシントンとイスラエルが戦争開始前にドイツへ一切協議しなかったと強調した。国際海事機関(IMO)の責任者も英紙『フィナンシャル・タイムズ』に対し、海軍による護衛では当該水路の通航を試みる船舶の安全を「100%保証」できないと述べ、トランプ氏がいう多国間連携によってホルムズ海峡の航行を回復できるとの見方に同意しなかった。イランを巡る戦局は、トランプ氏を明らかに多忙にさせている。トランプ氏は16日、月末に予定されていた北京での米中首脳会談を「およそ1カ月延期」する考えを示した。

板挟みとなる湾岸諸国

今回の戦争は、湾岸諸国を極めて微妙かつ危険な立場へ追い込んでいる。複数の湾岸諸国関係者はロイターに対し、アラブ諸国は当初、米国にイランとの開戦を求めていなかったと明かした。その一方で、現在は多くの国が米国に対し「中途でやめるべきではない」と促しているという。イランが湾岸の石油輸送の生命線と経済を継続的に脅かしているためである。ただ、ロイターは、ワシントンが湾岸諸国に米イスラエル連合軍への参加を強く求めており、トランプ氏がこれによって戦争の正当性と国内支持の上積みを狙っているとも伝えた。

2026年3月16日、ドバイ国際空港近くがドローン攻撃を受け、航空便が一時停止した。(AP)

2026年3月16日、ドバイ国際空港近くがドローン攻撃を受け、航空便が一時停止した。(写真/AP通信提供)

サウジアラビアの湾岸研究センター(Gulf Research Center)議長・サゲル氏(Abdulaziz Sager)は「湾岸地域全体では、イランがすべての湾岸諸国に対して、あらゆる一線を越えたとの認識が広がっている。当初、われわれは彼らを擁護し、戦争にも反対していた。だが、イランが攻撃の矛先をわれわれに向け始めた時点で、彼らは敵になった」と語った。ある関係者によると、湾岸諸国首脳の共通認識は極めて明確であり、トランプ氏はイランの軍事能力を全面的に弱体化させなければならない。さもなければ、イランは中東全体を人質に取り続けるという。

では、湾岸諸国は直接参戦するのか。ロイターが関係筋の話として伝えたところでは、いずれの湾岸諸国による一国単独の軍事行動も選択肢に入っていない。集団的な介入でなければ、個別国家が報復を受ける事態を避けられないためである。しかも、バーレーン、クウェート、カタール、サウジアラビア、オマーン、UAEで構成する湾岸協力会議は、これまでにオンライン会議を1回開いただけで、対応調整を議論するアラブ首脳会議も開催していない。短期的に共通認識がまとまる可能性は低い。

英ロンドン政治経済学院(LSE)のファワズ・ゲルゲス教授(Fawaz Gerges)は、湾岸諸国はイランの攻撃の脅威と、米国・イスラエル主導の戦争に巻き込まれる危険との間で均衡を取らなければならないと分析する。ただ、ゲルゲス氏は、湾岸諸国が戦局に加わってもワシントンにとって大きな助けにはならず、むしろイランの報復を招くリスクを大きく高めるとみている。一方、米プリンストン大のバーナード・ヘイケル教授(Bernard Haykel)は、中東の石油・ガスの大半が中国や日本へ流れている以上、それらの国々も責任を負うべきだと指摘する。とりわけ中国は、かつてソマリア沖の航路安全確保を支援した経緯があり、北京が今回も関与に前向きとなる可能性があるとの見方を示した。

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