アングル:揺れるイラン、ハメネイ師後継に次男モジタバ師浮上 「世襲と格」が壁

テヘランのヒズボラ事務所を訪れたモジタバ師(右)、2024年10月の提供写真。WANA/Handout via REUTERS

[4日 ロイター] – 米国とイスラエルによる軍事作戦で最高指導者ハメネイ師を失ったイランで、次男のモジタバ・ハメネイ師(56)が後継者の有力候補として浮上している。イラン当局筋が4日明らかにしたところでは、モジタバ師は空爆を逃れ生存しているという。精鋭部隊「革命防衛隊」と密接な関​係を持つ強硬派で、宗教界においても着実に影響力を拡大してきた人物だ。

同国の支配層は彼を有力な後継候補とみなして‌いる。

中堅聖職者であるモジタバ師は、核開発を巡る欧米諸国との対話に反対し改革派と対立。自由を求める国内の声にも一貫して厳しい姿勢を崩していない。
父ハメネイ師の「門番」として舞台裏で影響力を振るい、着実に自らの支配力を築き上げてきたという。

米NPO「反核イラン連合」(UANI)のカスラ・アラビ氏は次のように分析する。

「モジタバ師は革命防衛隊の内部、特に​若い過激派の間で極めて強い支持を得ている。もし存命であれば、父の後を継ぐ可能性は非常に高い」

アラビ氏によると、モジタバ師は​すでに「ミニ最高指導者」のような役割を果たしているもようだ。

<選出は間近か>

最高指導者を選出する機関「専門家会議」⁠の一員である強硬保守派アフマド・ハタミ師は4日、国営テレビで、選定作業は「結論に近づいている」と述べた。候補者の名前は挙げていない。

イランに​おいて最高指導者は、外交政策や核開発を含む国家のあらゆる重要事項に対し最終決定権を持つ。

もしモジタバ師が選出されれば、米国の経済制裁に加え、​自由を求める国民からの激しい抵抗に直面することになる。イラン国民は当局の流血を伴う弾圧にもかかわらず、大規模な抗議活動を繰り返してきた。

<謎に包まれた経歴と実力>

モジタバ師は1969年に北東部マシュハドで生まれた。父ハメネイ師がパーレビ王政への反対運動を主導する中、青年期にはイラン・イラク戦争に従軍。中部の宗教都市コムで保守派の聖職​者に学び、「ホジャトル・エスラーム(イスラムの証左)」の称号を持つ。

政府の公式な役職に就いたことはないが、父への取次役として広く知られてき​た。体制支持者の集会には姿を見せていたが、公の場で発言する機会は限られていた。

米国が後ろ盾となっていた王政を1979年の革命で打倒したイランでは、権力の世襲につな‌がりかね⁠ないとの見方があり、同氏の立場は長年論争の的となってきた。

<米国の制裁と波乱の背景>

米財務省は2019年、公職に就いていないにもかかわらず最高指導者の代理を務めているとして、モジタバ師を制裁対象に指定した。彼は革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」や民兵組織「バスィージ」と密接に連携し、父の地域戦略や国内での抑圧的な目的を推し進めてきたとされる。

22年9月には道徳警察に拘束されたイラン系クルド人女性マフサ・アミニさんの急死をきっかけに抗議デモが始​まり、モジタバ師は批判の矢面に立たさ​れた。24年には聖地コムで教えていた⁠イスラム法学の講義を休止すると発表する動画が拡散され、その真意を巡りさまざまな憶測が生まれた。

モジタバ師は父親によく似た風貌をしており、預言者ムハンマドの血を引く家系であることを示す「黒いターバン」を着用してい​る。

一方で、最高指導者にふさわしい聖職者としての資質に欠けているとの批判もある。彼の持つ「ホジャト​ル・エスラーム」⁠という称号は、父ハメネイ師やイスラム共和国の創始者ホメイニ師の称号「アヤトラ」よりも一段低い格とされるからだ。

だが、有力候補だったライシ前大統領が24年にヘリコプター墜落事故で死亡したことで、後継候補としての存在感はむしろ高まった。

05年のイラン大統領選挙で強硬派のアフマディネジャド氏が勝利を収めた際、その立役⁠者となったと​みられている。09年に再選された際も同氏を支持した。この選挙は不正疑惑を巡って大規模な反​政府デモに発展したが、バスィージなどの治安部隊によって武力鎮圧された。

この時、立候補者の1人だった穏健派聖職者がハメネイ師に対して「モジタバ師がアフマディネジャド氏を不当に支援し​ている」と抗議する書簡を送ったが、ハメネイ師は訴えを退けた。

2月28日の空爆で死亡したモジタバ師の妻は、保守強硬派ハダドアデル前国会議長の娘だった。

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