
日本クリスチャン・アカデミー(中村信博代表理事)は3月3日、米国およびイスラエルによるイランへの軍事攻撃に抗議し、対話の回復を求める声明を発表した。報道ではイランの最高指導者の死亡も伝えられており、同アカデミーは「深い憂慮を覚える」として強く非難した。
声明は、今回の軍事攻撃が国連安全保障理事会の決議や米議会の承認を経ていないと指摘し、一方的な武力行使による主権侵害は明白な国際法違反に当たると批判した。イランの長年にわたる権威主義的統治や人権抑圧に懸念を示しつつも、それが他国による武力行使を正当化する理由にはならないと強調。体制批判や安全保障上の問題と、主権侵害や指導者殺害の容認はまったく別の問題であるとした。
また、暴力によって「秩序」や「自由」を実現しようとする発想は、法の支配を脆弱にし、相互不信と報復の連鎖を拡大させると警告。軍事攻撃が生み出すのは安定ではなく、恐怖と憎悪の再生産であり、民間人の生命や生活基盤が最初に損なわれると訴えた。核抑止が語られ緊張が高まる状況自体が、すでに深刻な安全保障上の危機であるとの認識も示した。
同アカデミーは、教派や宗教を超えた対話の歩みを重ねてきた立場から、いま必要なのは相手を沈黙させる力ではなく、対話の道を取り戻す努力だと強調。「平和を実現する人々は幸いである」「剣を取る者は皆、剣で滅びる」との聖書の言葉を引き、暴力の連鎖に加わらない姿勢を示した。
その上で、米国政府およびイスラエル政府に軍事行動の即時停止と国際法に立脚した外交への回帰を求め、イランを含むすべての当事者に報復の停止と最大限の自制を要請。国際社会には事実関係の透明で公平な検証と人道支援の確保、包摂的な交渉枠組みの構築を、日本政府には対話を軸とする国際協調を支える外交努力の継続を求めた。
声明の全文は以下の通り。
米国とイスラエルによる対イラン軍事攻撃に抗議し、対話の回復を求める声明
公益財団法人日本クリスチャン・アカデミーは、報道されている米国およびイスラエルによるイランへの軍事攻撃(最高指導者の死亡を含むと伝えられる事態)に深い憂慮を覚え、強く抗議いたします。今回の軍事攻撃は、国連安全保障理事会の決議も米議会の承認も受けていません。一方的に武力に訴えて、主権を侵害する行為は、明白な国際法違反です。
たとえイランが長期にわたり権威主義的な統治を続けてきたとしても、そのことが他国による武力行使を正当化する理由にはなりません。体制への批判や安全保障上の懸念が存在することと、主権の侵害、武力による現状変更、さらには指導者殺害を容認することとはまったく別の問題です。私たちは、イラン国内における人権の抑圧や自由の制限に目をつむるものではありません。しかし、それでもなお、他国による軍事力行使が平和を実現することはないと考えます。暴力によって「秩序」や「自由」をもたらそうとする発想は、国際社会の法の支配を脆弱なものにし、相互不信と報復を増幅させ、平和の土台を破壊します。
軍事攻撃が生み出すのは安定ではなく、恐怖と憎悪の再生産です。民間人の生命、医療、生活基盤、将来への希望は、軍事的解決の名の下では常に最初に損なわれてきました。たとえ短期的に武力が成果を示したように見えても、それは次の暴力の火種となり、地域全体を危機へ引き込むことでしょう。核兵器による抑止が語られ、緊張が高まる状況そのものが、安全保障上すでに深刻な危機であることを認識しなければなりません。
私たちは、教派を超えて、非キリスト教的世界の多様な価値観とも誠実に向き合い、「対話」そして「はなしあい」を平和に至る道として大切に歩んできました。いま必要なのは相手を沈黙させる力ではありません。対話の道を取り戻すための努力です。聖書は「平和を実現する人々は幸いである」(マタイによる福音書5章9節)と教え、「剣を取る者は皆、剣で滅びる」(同26章52節)と暴力の連鎖に加わることを戒めています。
私たちは、米国政府およびイスラエル政府に対し、軍事行動の即時停止と国際法に立脚した外交による解決へ直ちに立ち返ることを求めます。あわせて、イランを含むすべての関係当事者に、報復の停止と最大限の自制を強く要請します。さらに国際社会には、事実関係の透明で公平な検証、人道支援の確保、そして包摂的な交渉枠組みの構築に向けた不断の努力を求めます。そして日本政府には、武力ではなく対話を軸とする国際協調を積極的に支える外交努力の継続を要請します。
私たちは今後も、いかなる理由によるものであれ、いかなる国家・組織・勢力によるものであったとしても、軍事力による問題解決を認めることはありません。平和は「はなしあい」によってのみ可能であることを粘り強く訴え続けます。
2026年3月3日
公益財団法人 日本クリスチャン・アカデミー