
ホルムズ海峡を通過する石油タンカー。2018年12月21日撮影。REUTERS/Hamad I Mohammed
[ローンセストン(オーストラリア) 2日 ロイター] – 石油輸出国機構(OPEC)プラスは4月から原油生産を日量20万6000バレル引き上げると決めたが、OPECプラスのほぼ10年間の歴史上おそらく最も無意味な決定となった。
世界の原油需要の約0.2%に相当する供給を今から1カ月後に増産しても、中東で拡大する紛争の前では象徴的な態度でしかない。紛争は既に深刻な供給混乱を引き起こしているのだ。
しかし、自主減産を実施しているOPECプラスの8カ国は市場に供給の安全性を安心させるために1日の会合でできることがほとんどなかった。
4月からの日量20万6000バレルの増産はアナリストが会合前に予測した13万7000バレルを上回ったが、何らかの影響があるとすれば、OPECプラスが必要に応じてさらに増産できるという姿勢を示した象徴的な意味合いだろう。
当然ながら、OPECプラスの決定は週明け2日の原油市場の取引開始に伴う価格急騰を回避するのに不十分だった。欧州市場の指標となる北海ブレント原油先物は一時13.6%も跳ね上がり、12カ月ぶりの最高値となる1バレル=82.37ドルを付けた。その後、アジア市場の序盤で79.10ドル付近に落ち着いている。
原油市場の最大の関心事は中東からの供給停止がどの程度続くのか、主要輸入国がどのように反応するかどうかだ。
戦時の混乱にまつわる相当な不透明感は常に存在しており、イスラエルと米国がイランに対して現在爆撃やミサイル攻撃を実施しイランが周辺の湾岸諸国を標的とした報復攻撃を続けている状況も例外でない。
しかし原油市場にとって現在分かっていることと現状に対して最も起こり得る対応に目を向けるのが重要だ。
ホルムズ海峡は原油と石油製品が日量約2000万バレル通過しているが、船主や保険会社は大規模な紛争が進行する中で船舶が被害を受けるリスクを取りたがらないため実質的に封鎖された状態にある。
A graph showing how much oil passes through the Strait of Hormuz every day
幸いなことに、イランは今のところ世界の原油・石油製品供給の約20%を運搬するこの狭い航路を積極的に封鎖しようとしていないように思われる。
つまり戦闘が停止すれば、タンカーは迅速に海峡の通過を再開し供給のボトルネックを解消できるのだ。
<中国とインド>
供給懸念をある程度緩和させる可能性がある要因が他にも存在する。
ます1番目は世界最大の原油輸入国の中国が今後数カ月の輸入量を抑制するとみられることだ。
中国の輸入はここ数カ月間極めて好調で、LSEG原油調査の推計によると、1月に日量1161万バレル、2月に過去最高だった昨年12月の1318万バレルを更新する1342万バレルに達したとみられる。
中国は価格急騰のため現在手配している貨物が5月と6月に引き渡される時に、輸入量を2月の水準から最大で日量200万バレル削減する可能性がある。
別の要因はアジア第2の輸入国インドだ。インドはトランプ米大統領とロシア産原油の輸入の劇的な削減で合意したが、再びロシア産の購入に切り替えるだろう。
インドにとって原油供給の安全保障はトランプ氏との合意に優先する。とりわけ、インドに供給難の可能性を生み出しているのはトランプ氏が選択した対イラン戦だからだ。
また、ホルムズ海峡を経由する供給が長期間制約を受けたままならば、輸入国は戦略備蓄を放出する一方で、世界中の輸出国は生産量と輸出量を最大化しようとするだろう。
原油はメディア報道の主見出しを大きく飾るが、液化天然ガス(LNG)に注目するべきだ。カタールの輸出量は世界全体の約20%を占めており、またホルムズ海峡も通過している。
原油と同様に、輸入国は供給混乱のために価格が高騰すれば需要を調整できるし、中国などの主要な買い手は十中八九、スポット購入を削減して契約分を転売しさえするだろう。
インドのようなアジアの価格に敏感な買い手もまた輸入量を縮小するだろうし、欧州でさえも輸入を抑えて冬のピーク需要の期間中に減った在庫を再び積み増すペースを落とす可能性がある。
原油市場とLNG市場のどちらにも重要なのは戦闘がどの程度の期間続くかどうかであり、これが見通しを不可能にさせる最大の要因だ。
米国とイスラエルの連合、イランの双方が主要な弾薬を使い果たすかもしれないが、おそらく何らかの形で紛争を長期間継続できるだろう。
原油と天然ガスの価格が高騰し高値のままの状態が続ければ、トランプ氏や他の指導者たちは紛争を終結させるよう国民から圧力が高まりやすくなるだろう。
(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

