Discord社は2月9日、Discordにて10代向け安全保護機能を標準設定化することを発表し、3月上旬からこの変更を段階的にグローバル展開していくと告知。一部機能に制限が設けられ、解除のために年齢確認で成人として認められる必要があることが伝えられていた。

ところがこの決定を受けて世界的に反発が巻き起こることに。そうした反応を受けてDiscord社は2月25日、グローバル展開を2026年後半に延期し、年齢確認手順を追加することなどをアナウンスしている。今回の問題の発端となったのは、10代のユーザー向けの保護機能強化を目的とする機能の標準化だ。具体的には以下のとおり。

・コンテンツフィルター:センシティブなコンテンツのぼかし解除、または設定のオフには成人としての年齢認証が必要になる
・年齢制限スペース:成人として年齢認証されたユーザーのみが、年齢制限のあるチャンネル・サーバー・アプリコマンドにアクセスできる
・メッセージリクエスト受信箱:知らない可能性のあるユーザーからのダイレクトメッセージは、デフォルトで別の受信箱に振り分けられ、この設定を変更する権限は成人として年齢保証されているユーザーに限定される
・フレンドリクエスト警告:知らない可能性のあるユーザーからのフレンド申請については警告表示される
・ステージの制限:サーバー内のステージで発言できるのは、成人として年齢保証されているユーザーのみ

それぞれオプション的な機能ではあるものの、解除のためには年齢確認で成人として認められる必要があると告知された。ただ年齢確認においては、ユーザーが自分の顔を動画撮影することで年齢推定をおこなうか、もしくは身分証明書類を提出することを求められると説明。将来的にはさらなる選択肢が提供されるとも伝えられ、また年齢推定では撮影された動画はユーザーの端末外に出ることはなく、提出された身分証明書も迅速に削除されるといったプライバシー保護におけるアプローチも説明された。

しかしそうした告知は、ユーザーからの大きな反発を招くこととなった。というのもDiscord社は昨年、英国およびオーストラリアにて新たな年齢確認プロセスについて試験導入をおこなっていた。その後同社は昨年10月に、カスタマーサポート業務を委託していた外部企業5CAにおいて不正アクセスが発生し、年齢確認において用いられた政府発行の身分証明書の写真も含むおよそ7万人分のデータが流出したことを報告(関連記事)。このことを踏まえて、年齢確認プロセスがグローバル展開されるにあたってのセキュリティ面に強い懸念が寄せられたかたちだ。

またその後、先述した10代向け安全保護機能を標準設定化の告知における“注意書き”も物議を醸すことに。当初告知内には、英国在住のユーザーにおいては提出した情報が年齢確認プロセスの委託先であるPersonaによる実験(experiment)の対象となる可能性があるといった注意書きがなされていた。このなかでは提出された情報が最大7日間にわたって一時保存され、その後削除されると説明。こうした注意書きはひっそりと消えており、さらなる不信感を招くことになったようだ(Ars Technica)。

一連のユーザー反応を受け、このたびDiscord社は当初3月から開始予定であった10代向け安全保護機能を標準設定化について、今年後半に延期すると発表。あわせて寄せられていたユーザーの懸念への回答もおこなっている。

まず同社は、90%以上のユーザーはこれまでどおりDiscordを使い続けられると説明。というのもDiscordでは既存の内部安全システムによってスパム対策、レイド防止、組織的嫌がらせ検出などをおこなっているそうで、このシステムによって多くの成人ユ―ザーは操作をおこなうことなく年齢が判定されているという。アカウント作成からの期間、支払い方法の登録有無、参加しているサーバーの種類、アカウントの活動パターンなどから判断されているそうで、そうした手法については今後詳細が説明されることも伝えられている。

一方で10%未満のユーザーは年齢確認が必要になるものの、確認なしでも先述したような一部機能の制限に留まることも改めて伝えられた。ちなみに一部Discordユーザー間では成人向けコンテンツではなくネタバレ情報などを投稿する場として、チャンネルへの年齢制限を設ける運用がおこなわれていたという。そうしたニーズに応えるために、新たにネタバレ専用チャンネルを作ることができるオプションを構築中とのこと。

なお英国やオーストラリア、ブラジルなど一部の地域では、法律上内部システムではなく顔の推定やID確認など認可方式の使用が求められる場合があるそうだ。こうした地域では外部委託先での年齢確認が必要になることが説明された。

また年齢確認プロセスにおいては、先述したカスタマーサポートの委託先における情報流出により不信感が高まっていることを認識していると説明。現在は5CAへの委託はおこなっておらず、またPersonaについても英国での委託先として採用しないことを決定したという。

委託先についてはセキュリティ・プライバシー面の審査をおこなったうえで、データの利用制限やデータの保存・削除における厳格な要件を設けるとのこと。年齢確認情報は必要最小限の期間のみ保存し、多くの場合は即時削除することを基準として設けるそうだ。グローバル展開にあたってはすべての委託先を公開し、データの取り扱いを明示することなども示されている。

大きな批判を招くことになった、Discordの10代向け安全保護機能を標準設定化と、年齢確認プロセスのグローバル展開の告知。ユーザーの強い懸念を受けて、グローバル展開を遅らせつつ、透明性の強化や年齢確認手段やチャンネル設定の追加などが告知された格好だ。今回の案内により、ユーザーの懸念が払しょくされるかどうかは注目されるところ。今年後半に予定されているというグローバル展開に向けて、引き続きDiscord社とコミュニティの動向は注視される。