ESA(ヨーロッパ宇宙機関)は2026年2月4日付で、火星・南半球の高地を飛行しているかのような体験ができる動画「Fly around Flaugergues Crater on Mars」を公開しました。
この動画はESAの火星探査機「Mars Express(マーズ・エクスプレス)」の観測データを用いて作成されたもので、火星の荒涼とした大地や巨大なクレーターの様子を鮮明に映し出しています。
【▲ 動画「Fly around Flaugergues Crater on Mars」(Credit: European Space Agency (ESA); Footage: ESA/DLR/FU Berlin & NASA/JPL-Caltech/MSSS; Acknowledgments: Data processing/animation: Björn Schreiner, Image Processing Group (FU Berlin))】
巨大な地溝からクレーターへと巡る旅
動画の冒頭、カメラはScylla Scopulus(スキュラ・スコプルス)およびCharybdis Scopulus(カリュブディス・スコプルス)と呼ばれる、2つの急峻な崖に挟まれた地域の上空を進みます。この地形は、地殻変動によって大地が引き裂かれて形成された地溝と呼ばれるもので、幅は約75km、深さは約1kmにも及びます。
地溝帯を進むと、左手には直径150kmのBakhuysen(バクホイゼン)クレーターが見えてきます。この巨大なクレーターを横目にさらに北上すると、今回の動画の主題であるFlaugergues(フロジェルグ)クレーターへと到達します。
風と溶岩が谷を刻んだFlaugerguesクレーター
Flaugerguesクレーターは、火星の南部高地に位置する直径約240kmの広大な盆地です。この地域は多数のクレーターに覆われた荒れた地形が特徴ですが、Flaugerguesの内部もまた複雑な様相を呈しています。
ESAによると、Flaugerguesクレーターの床面の半分は起伏に富んでおり、一部は標高1kmほど盛り上がっている場所もあります。また、岩肌を横切るように走る谷のような地形は、風や溶岩の流れによって形成された可能性が高いとされています。
なお、動画ではクレーターの南側から地溝帯に沿って北上し、クレーターの東側を移動した後、北側から旋回して西側の縁へと至るルートが再現されています。
【▲ 動画「Fly around Flaugergues Crater on Mars」における仮想の飛行経路を示した図。右上のFlaugergues(フロジェルグ)クレーターの南側から東側へ接近した後、北側を回り込んで西側の縁へと至る(Credit: ESA/DLR/FU Berlin & NASA/JPL-Caltech/MSSS)】Mars Experssの高解像度ステレオカメラのデータから作成
今回公開された動画は、実際に探査機がこのルートを飛行して撮影した映像というわけではありません。Mars Expressに搭載されている高解像度ステレオカメラ「HRSC」で取得した画像データと、火星のデジタル地形モデル(DTM)を組み合わせて作成された、3次元の景観アニメーションです。
地形の起伏をわかりやすくするために、垂直方向の高さは実際の3倍に強調されています。また、遠景には地形モデルの境界を自然に見せるための霞(かすみ)などの大気効果が加えられています。
2003年の打ち上げ以来、20年以上にわたり火星の観測を続けているMars Expressが取得したデータは、赤い惑星の地質学的歴史を紐解くための重要な手がかりを提供し続けています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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