フラストレーションは否定的に捉えられがちだが、脳の脅威や報酬の処理に関わる部位を刺激し、困難への適応を助けてくれる。(PHOTOGRAPH BY CAT BOX, SHUTTERSTOCK)

フラストレーションは否定的に捉えられがちだが、脳の脅威や報酬の処理に関わる部位を刺激し、困難への適応を助けてくれる。(PHOTOGRAPH BY CAT BOX, SHUTTERSTOCK)

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 私たちは日常的にイライラする。体重がちっとも減らない。行列が進まない。Wi‑Fiがつながらない。大きな目標からささいな不便まで、イライラは生活のあらゆる場面に入り込んでいる。

 心理学者によれば、こうしたイライラした感情は、一時的な不快感にとどまらない。不安やうつに比べるとあまり深刻に扱われないが、フラストレーション(欲求不満)は脳や体に波及し、攻撃性やストレス、人間関係の悪化を招くことがあると、オランダ、ユトレヒト大学の発達心理学准教授オディリア・ラカーレ氏は指摘する。実際、職場で最もよく経験する感情でもある。

 しかし近年、意外にもこのイライラの良い面が明らかになりつつある。私たちが学び、適応し、成長する上で中心的な役割を果たすことを示す研究も増えている。イライラにはきちんとした存在理由があるのだと、行動科学・マーケティングを専門とする米シカゴ大学特別功労教授アイエレット・フィッシュバック氏は語る。

 外的な要因を標的にしがちな怒りや、要求が多すぎることで生じるストレスとは異なり、フラストレーションは「基本的には、物事が自分の思いどおりに進まないときに生じる感情で、目標を見直し、他のやり方を考えるためのフィードバックなのです」と氏は説明する。

 そうした軌道修正によって目標が鮮明になり、粘り強さも養われると、フランス、NEOMAビジネススクール教授で組織行動論を教えるエレナ・ゴンサレス・ゴメス氏は語る。フラストレーションが、人をよりよい段階へと導くきっかけになることもあるという。フラストレーションを感じる状況で失敗を経験した学生ほど、その後の問題解決の場面で高い成果を上げる傾向があることを示す研究もある。

「プログラム開発者が作業で行き詰まったとき、そこから抜け出す別の道筋を見つけることがあります。例えばプログラムの効率を高めるショートカットに気づくといった具合です」と、ゴンサレス・ゴメス氏は説明する。「こうしたプロセスは創造性を高め、長い目で見れば心身の健康にもつながります」

 誰もが経験するこの「イライラ」という感情の捉え方を変えることは、日常の中でぶつかるさまざまな障害を、自身のレジリエンス(しなやかな強さ)に変える鍵かもしれない。フラストレーションをどのように捉え直し、どう付き合ったらいいのか、6つの秘訣を紹介しよう。(参考記事:「メンタルを整え、平常心を保つ「軍で鍛えた」呼吸法」)

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