
北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記=労働新聞(c)KOREA WAVE
【02月05日 KOREA WAVE】北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が、新設・改修した大規模畜産農場で、先代指導部の農村政策を批判する演説を披露し、注目を集めている。数年にわたり「農村の現代化」を推し進める中、食と生計の問題を理由に、先代路線を不可侵視してきた慣例を崩したとの受け止めが広がる。
党機関紙・労働新聞は3日、キム総書記が2日、平安北道・雲田郡の三光畜産農場の稼働式で語った演説全文を掲載した。事業は老朽化した既存農場を現代的方式で改修するもので、北朝鮮が2024年に打ち出した「地方発展20×10政策」など、近年注力する農村現代化の一環と位置付けられる。
総書記は「世紀的後進性が色濃かった雲田郡の一角が、現代農村と現代畜産の未来を直感させる標準になった。まさに天地開闢だ」と成果を強調。その上で、「農村問題を巡り、当の政策提示や『社会主義農村テーゼ』の貫徹に半世紀以上取り組んだというが、なぜ我が農村が疲弊を払拭できなかったのか、改めて認識する必要がある」と踏み込んだ。
「社会主義農村テーゼ」は1964年2月にキム・イルソン(金日成)主席が提示した「社会主義農村問題に関するテーゼ」を指す。労農間の階級差解消や協同組合農場の推進を掲げ、北朝鮮農業の基本指針とされてきた。今回の発言は、祖父の政策が結果的に十分ではなかったと示唆したものと受け止められる。
総書記はさらに「過去の農村建設は言葉の学習にとどまったと言っても過言ではない。執行性や実現性を欠く政策は理論にすぎない」「国家投資や支援が散発的・一時的・誇示的に偏った点も誤りだ」と、従来路線を率直に批判した。農村現代化の緊急性と、三光畜産農場のモデル性を強調し、全国の幹部に「過去のやり方」を捨てるよう迫る狙いが透ける。
先代政策の誤りに言及する姿勢は、表面的には成果主義の強調だが、いわゆる「首領無謬論」を正面から揺さぶる異例のメッセージでもある。専門家の間では、執権15年目に入り、自身の統治理念に対する自信が固まった表れとの見方も出ている。
キム総書記は2024年12月20日の成川郡地方工業工場の竣工式でも、「社会主義農村テーゼ」が十分に実現されなかったと指摘。一方、2021年末の全員会議で提示した「新時代の農村革命綱領」は短期間で成果を挙げたと自賛した経緯がある。2021年の第8回党大会以降、先代の影から距離を取り、独自路線の幅を広げてきた流れと符合する。
最近2~3年、北朝鮮メディアがキム・イルソン(金日成)主席の誕生日「太陽節」(4月15日)を「4・15」、キム・ジョンイル(金正日)総書記の誕生日「光明星節」(2月16日)を「2・16」と簡略表記する動きも、偶像化の記号を薄める文脈で語られる。
専門家は、近く開かれる第9回党大会で、キム・ジョンウン総書記固有の統治理念である「キム・ジョンウン主義」が一段と強化される可能性が高いとみる。「わが国家第一主義」や「人民大衆第一主義」といった重点理念を党規約に明記する展開も取り沙汰されており、今回の大胆な演説は、党大会での重要決定を予告するシグナルとして受け止められている。
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