(CNN) 気候変動の影響で海氷が融解するにつれ、グリーンランドとカナダのバフィン島の間に位置するバフィン湾や、カナダ北東部のハドソン湾では、ホッキョクグマがやせ細り、子どもの数も減少しているとの傾向がはっきり記録されてきた。
だが、科学誌サイエンティフィック・リポーツに29日発表された論文によると、ノルウェー北極圏に生息するホッキョクグマたちはこの傾向に反して、氷が急速に減少する中でむしろ太り、健康状態も良くなっているという。
調査に参加したノルウェーや英国、カナダの研究者によると、ノルウェーとロシアの北部沖に広がるバレンツ海地域はここ数十年、北極圏の他の地域に比べて気温の上昇幅が大きく、場所によっては10年で最大2度の上昇が観測されている。
この地域の海氷生息地が失われるスピードは、他のホッキョクグマ生息地の2倍以上に上る。
このため、研究者チームは海氷が減少した期間中、クマたちはやせ細っていったのだろうと予想していた。
今回の研究によると、野生動物の体の状態は、環境の変化が個体群へ与える影響をいち早く示す警鐘となることが多い。
研究チームは1992年~2019年の27年間を振り返り、成体のホッキョクグマ770頭の身体測定記録1188件と、この地域の氷の面積が一定ラインを下回った日数を比較した。ホッキョクグマのデータはバレンツ海に浮かぶノルウェー領スバールバル諸島で得られたものだ。
この期間中、ホッキョクグマが氷のない状態で過ごさねばならない日数は100日近く増えた。だが、1995年から2000年にかけて一時的に体の状態が悪化した後、クマたちはその後の20年間でむしろ太り、健康状態も改善した。
つまり氷が減少し、ホッキョクグマがアザラシを狩る能力は低下したにもかかわらず、脂肪の蓄えは増えたことになる。
論文の筆頭著者で、ノルウェー極地研究所の上級研究員でもある集団遺伝学者のヨン・オース氏は30日、CNNの取材に「最も有力な説明として考えられるのは、スバールバル諸島のホッキョクグマは餌を獲得する別の機会を利用し、生態学的にかなりの柔軟性を見せることで、海氷が少なくなった状況を今のところ補うことができている、というものだろう」と説明した。
そのうえで「この地域のクマたちは陸上のトナカイや卵、セイウチの死骸、さらにはゼニガタアザラシにもありつくことができる」と続けた。
ただ、研究チームは慎重な姿勢を崩していない。

ノルウェーのホッキョクグマプログラムの責任者で研究主任著者のヨン・オース氏(中央)らがスバールバル諸島東部のスピッツベルゲン島でオスのホッキョクグマを測定する様子=2025年4月17日/Olivier Morin/AFP/Getty Images
オース氏は「重要なのは、体の状態が保たれているからといって、海氷減少の影響がまったく無いわけではないという点だ」「むしろ今回の研究は、スバールバル諸島のクマたちが今のところ、氷の減少に伴うエネルギー面の影響を一部緩和できていることを示している」と指摘する。
「こうした緩和能力は、北極圏の他の地域にはない局地的な条件に依存している可能性がある。海氷の減少が続いたり、加速したりすれば、立ちゆかなくなるかもしれない」(オース氏)
オース氏は今回の研究について、「気候変動がホッキョクグマに深刻なリスクをもたらすという全体的な理解と矛盾するものではない。気候の影響は複雑で、それを補う一時的、あるいは部分的なメカニズムが絡んでいる可能性を浮き彫りにするものだ」と指摘している。
