「独身偽装」の被害と訴訟が続々
2025年の年末、婚活アプリにからむいくつかの裁判が報じられた。それはアプリで出会った相手が独身偽装していたという訴えだ。
たとえば読売新聞では、2025年12月1日に大阪地裁の裁判について報じている。訴えた女性は、独身限定の婚活アプリで出会い交際していた男性が既婚者だったとして、貞操権侵害を理由に慰謝料の支払いを求め、地裁は55万円の支払いを命じたという。
FNNプライムオンラインや毎日新聞が報じた事例では、やはり独身限定の婚活アプリで知り合った女性が原告の裁判で、2児の父である被告男性に781万円の支払いを求めていた。結果151万円の支払いを命じられたという。
「独身限定」と謳っているにもかかわらず登録するのは明らかに偽装だ。しかも裁判の事例では避妊せずに性行為を行った事例もあるという。「独身偽装被害者の会」というアカウントも作られている。
真剣に恋愛をしようとしている相手に、自身が結婚していることを隠して性行為をする。それだけでもひどいのに、避妊もせずに性行為をする事例まであるという。
「望まない妊娠は、女性の心に大きなダメージを与えます。これが原因でうつや不安障害など心の病になることも少なくありません。そしてマッチングアプリで出会った人が独身偽装しているのではないかという調査依頼も増えています」
こう語るのは、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さん。彼女は、メンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。
山村さん連載「探偵はカウンセラー」28回で紹介しているのは、53歳の太朗さん(仮名)が26歳の娘が独身限定のマッチングアプリで会った男性の調査を依頼してきた事例だ。娘が大晦日に体調を崩したことから、避妊なしに性行為をしたとわかり、話を聞いていくと既婚者の疑いが濃厚だった。それでも恋人を信じている娘に真実を伝えるために両親が調査を依頼したのだ。
26歳娘がマッチングアプリで出会った恋人
太朗さんと52歳の妻は、26歳の娘がマッチングアプリで知り合った交際相手のことを既婚者ではないかと疑っています。男性は娘に28歳で離婚歴ある独身だと語っていました。発端は、娘がアイドルのカウントダウンコンサートに行った帰りに、家族の恒例行事である初日の出ドライブに、緊急避妊薬(アフターピル)を飲んだあとに体調不良になり行けなかったから。
娘はその前日、交際1年の記念に、彼とシティホテルに宿泊しましたが、避妊具のアメニティがないために、避妊せずに性交渉をしたのです。その後、娘は大晦日も診察しているアフターピルを処方するクリニックに駆け込み、服薬してからコンサートに参加し、体調を崩したのです。
娘はそれまで両親に恋人の存在を黙っていました。結婚前提だと話す娘に「そこまで深い仲なら、うちに連れてこい」と言うと、「彼は平日夜か土曜日、日曜日や正月などのイベントは外出できない」と答えたのです。恋人は「夜は両親の介護をしている」と伝えていたのでした。
探偵に頼むほど事態を重く見ているのは、娘は19歳の時に自称大学生の男と性交渉をして望まない妊娠をし、中絶手術を受けた経験があるから。その後、うつになり、通っていた大学を半年休学。アニメ作品に出会い、気力を取り戻します。「声優になりたい」という夢を持ち、復学と同時に専門学校にも通い、両方卒業しました。
その後、娘は声優を目指していましたが、2年前に夢を諦め、太朗さんが経営する飲食店運営会社でアルバイトを始めます。結婚願望が高まったころにマッチングアプリを始め、交際相手と知り合います。

太朗さん夫妻は、男が既婚者かどうかを知り、結果次第では娘と別れさせたい。娘も調査には同意していました。調査に入る前に、相手の住所や勤務先、写真などの資料を揃えていたこともあり、翌日から張り込みを開始することにしたのです。
彼が会社の帰りに購入したものは…
早朝5時から、都内にある彼の自宅前で待機します。娘からもらったとおりの名前の表札が出ているので、この家で間違いがないはず。
1階に車庫があるタイプの築10年程度の建売住宅で、彼は「離婚してから実家に戻り、両親の介護をしている」と言っていますが、疑わしいところです。家の電気はついており、人の気配が垣間見えます。車庫には国産のコンパクトカーが止まっており、チャイルドシートはありません。かといって、介護仕様の車種ではありません。
子供がいるなら、玄関先に三輪車や子供用自転車、子供を乗せる仕様の自転車などが置いてあるのですが、そういうものもありませんでした。
6時半にウールのコートを着てビジネスリュックを担いだ彼が1人で出てきました。身長は180cmくらいでスラリとしていて、かっこいい雰囲気。スニーカーを履いているので、内勤なのでしょう。電車を2回乗り換え、1時間ほどかけて都心にあるオフィスに出勤し、18時の退勤まで出てきませんでした。
仕事が終わると早足で駅まで向かい、急ぐように自宅に帰ります。地元駅のドラッグストアで、生後3ヵ月用のテープタイプのオムツとベビーシャンプーを購入して、早足で自宅に入っていきました。

