(CNN) 天文学者の国際チームがこのほど、「銀河になりそこねた」タイプの天体を見つけたとする研究結果を発表した。宇宙最大のなぞの一つ「暗黒物質(ダークマター)」に光を当てる発見となる可能性もある。
米天文物理学専門誌「アストロフィジカルジャーナル・レターズ(ApJL)」に今月発表された研究によると、「クラウドナイン」と呼ばれるこの天体は暗黒物質の集まりで、初期の宇宙で起きた銀河形成の残骸と考えられる。
暗黒物質は宇宙の構造を決定づけている正体不明の物質だ。直接観測することはできないが、宇宙の物質全体の85パーセントを占め、重力の作用によって検出が可能とされる。
研究チームのメンバー、米ボルティモアにある宇宙望遠鏡科学研究所(STScl)のアンドリュー・フォックス氏は声明で、「この雲は暗黒宇宙をのぞく窓だ」と述べた。
さらに「私たちは理論上、宇宙の質量の大部分が暗黒物質だと知っている。しかし暗黒物質は光を発しないため、検出が難しい」と説明した。
これまでの研究によると、暗黒物質は138億年前の「ビッグバン」で宇宙が誕生した時に生成された。その暗黒物質がガスを引き寄せて星が形成され、さらに星の集まりが銀河となった。一方、十分なガスが集まらない場合は星ができず、暗黒物質とガスで構成される銀河未満の天体が残ったと考えられる。
クラウドナインは3年前、中国貴州省にある500メートル球面電波望遠鏡(FAST)を使い、渦巻き銀河「メシエ94」付近の水素ガス雲を調べた観測で発見されていた。チームによれば、最近、米ハッブル宇宙望遠鏡による観測で、星を持たないことが確認された。
チームのもう1人のメンバー、イタリア・ミラノビコッカ大学のアレハンドロ・ベニテスジャンバイ准教授は、「これは銀河のなりそこないの物語だ」と話す。「星が見当たらなかったことで、理論の正しさが証明された」
幻の天体を求めて
無数の明るい星が集まる銀河とは違って、なりそこないの銀河は暗く、見つけるのが難しい。
クラウドナインは一見、「矮小(わいしょうぎんが)銀河」のようでもあると、チームは指摘する。私たちの天の川銀河が何千億個もの星を持つのに対し、矮小銀河の星は1000個前後から数十億個までだ。

メシエ94銀河は地球から1600万光年離れた距離にある/NASA
「銀河形成の理論によると、星が形成され、暗いガス雲が明るい銀河になるには一定量の暗黒物質が必要とされる」と、フォックス氏は語る。「クラウドナインはその基準に到達せず、星が存在していない天体の例だ」
クラウドナインは、メシエ94付近で見つかった9番目のガス雲だったことからそう名づけられた。ガスのわずかなゆがみは、メシエ94との相互作用を示唆している。
中心部は中性水素で構成され、直径が約4900光年。含まれる水素ガスは太陽の質量の約100万倍、暗黒物質は太陽の約50億倍に上ると推定される。
研究に参加したSTSclのレイチェル・ビートン氏は「大量の『見えない』重力がクラウドナインをまとめているに違いない」と話す。「目に見える中性水素ガスの質量だけでは足りない。暗黒ハロー(暗黒物質が集まった塊)の重力が支えになっているはずだ」
ビートン氏によれば、クラウドナインは微妙なバランスの上に存在している。
「クラウドナインの質量はガスをつなぎ止めるにはちょうど十分だが、ガスから星を形成させるには足りない」「天の川銀河周辺で同じような天体があまり見つかっていないのは、これがまれな状態だからだ。暗黒ハローはたいていガスをすべて失ってしまうか、一人前の銀河になるかのどちらかだ」
クラウドナインの正体を探る
研究チームによると、クラウドナインが将来、銀河に変わる可能性もある。十分な質量に達すればガスが崩壊して星の誕生につながり、遅ればせながら銀河が誕生するだろう。
「その一方でクラウドナインがメシエ94に引き寄せられ、質量を失うこともあり得る」と、フォックス氏は言う。「ガスを奪われた末、存在が消えてしまうかもしれない」
今後、高精度の観測でクラウドナインの中心部がさらにはっきり見えれば、そこにどれだけの暗黒物質が含まれるかが分かり、暗黒物質の粒子自体の性質を絞り込む研究にもつながることが期待される。
ただ、今回の研究に参加していない英キール大学のジャッコ・バン・ルーン氏によると、星をほとんど、あるいはまったく持たない「暗黒銀河」かと思われたガス雲は、クラウドナインが初めてではない。
研究チームが言及しているもうひとつの水素ガス雲「FAST J0139+4328」はその一例だが、最近になって、ごく弱小ながら銀河であることが判明した。
クラウドナインに含まれる水素ガスは、FAST J0139+4328と比べて100分の1ほどにすぎない。バン・ルーン氏によれば、クラウドナインも実はさらに弱小で、ハッブル望遠鏡を使っても検出できないような銀河である可能性が考えられる。
バン・ルーン氏は「光学的に暗いガス雲が暗黒物質の遺物だという説を唱えるには、もっと強力で明確な証拠が求められる」と主張した。
一方、研究チームはクラウドナインが例外なのか、あるいは多数ある残骸の中のひとつなのかを判断するために、今後も似たような天体を探し続ける構えだ。
