
オレンジ色で示された扁桃体は脳の警報システムとして機能する。危険を感知すると視床下部に信号を発し、ストレス反応を引き起こさせる。しかし、悪いニュースなどにさらされ続け、危険信号が繰り返し発せられると、脳はストレス反応を調節できなくなる。(ILLUSTRATION BY KATERYNA KON, SCIENCE PHOTO LIBRARY)
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メディアが心にダメージを与えることに、米カリフォルニア大学アーバイン校の心理学・医学・公衆衛生学教授ロクサン・コーエン・シルバー氏が初めて気づいたのは1999年のことだった。
米国コロラド州リトルトンでコロンバイン高校銃乱射事件について研究していた氏は、1つの憂慮すべき傾向に気づいた。多くの保護者や生徒が、事件発生からわずか数時間後にジャーナリストから取材や撮影を求められたことを極めて苦痛に感じていたのだ。
しかし、シルバー氏がメディアの有害性を真に理解しはじめたのは2001年9月11日の米同時多発テロ事件以降のことだった。3年間にわたり人々を追跡調査した結果、同テロ事件に関するニュースに触れる頻度が高い人ほど、時間の経過とともに心と体の健康問題を抱える傾向が高まることが分かったのだ。
それから20年たった今、次々と届く悲惨な報道は体のストレス反応を破綻させ、事件から数日間、数週間、数カ月間、数年間にわたって心理的な問題を引き起こしうることを示す証拠が十分にそろっている。
にもかかわらず、「ドゥームスクロール」という言葉(「破滅、悲運」を表す「ドゥーム」と延々と見続ける「スクロール」を合わせた造語)があるように、私たちは事件や事故、災害などのつらいニュースやソーシャルメディアの投稿を際限なく見続けてしまいがちだ。
なぜ、私たちはこの悪循環を止められないのだろうか? そして、どう対処すれば抜け出せるのだろうか?(参考記事:「たった5分でストレスを和らげる確かな方法6選、科学の裏付け」)
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