自宅でレコードを嗜むようになって、1年以上が経った。いまでは自然とレコードに手が伸び、お気に入りの一枚を壁に飾るほど、レコードは日常の一部になっている。

とはいえ、在宅での仕事中にBGMとしてかけたり、休みの日にふと「あ、レコードかけよ」と思い立つくらい。「日常の一部」とは言ったものの、特別なこだわりがあるわけでもない。私とレコードの関係はそんな感じだ。

だから、いま使っている初心者向けレコードプレーヤーはちょうどいい。Bluetooth対応で、オート再生ボタンもある。使いたいときは、レコードプレーヤーとBluetoothスピーカーの電源を入れ、レコードをセットして再生ボタンを押すだけ。超カンタンだし、これがベストだと思う。

レコードは沼にハマると……なんて話も聞くけれど、私には無縁だろう。今以上に大きなオーディオ機器を置くのは、部屋のインテリアにも、自分の生活スタイルにも合わないし、このままで十分だ。

そう思っていた。この秋、Technicsが発表した「SL-50C」を見るまでは。

インテリアにも映える洗練された佇まい。新デザインに一目惚れ我が家の中心にある、ヴィンテージ家具。置いてみたら想像通り、相性ぴったりだった

Technicsのレコードプレーヤーといえば、DJ仕様の無骨さや、重厚でプロっぽい雰囲気が特徴。すごくカッコよくて、憧れではあったけれど、自分が使うところを想像すると、どこか違和感があった。

けれど「SL-50C」は、これまでのイメージとは全く違う。存在を主張しすぎないけれど、質感の良さは見てとれる、シンプルで洗練されたモダンなデザイン。ニュースで見た瞬間に、部屋の中に置くイメージが自然と湧いた。

シンプル、でもそれだけじゃない。発表時からその質感の良さが滲み出ていた

完全に一目惚れだ。今のレコード再生環境に全く不満はないけれど、「SL-50C」の姿を見たら、レコード生活の一歩先へ、踏み出してみたくなってしまった。

そんな話を編集部に伝えると、「ステップアップにぴったりですし、試してみませんか?」と嬉しいお誘い。二つ返事でお願いしたら、なんと「SL-50C」に加えてワイヤレスアクティブスピーカー「SC-CX700」まで届いた。合計約45万円のセットだ。

もちろん、いやステップ何段登らすつもりやねん!と思ったが、せっかくの機会。レコード初心者の私にはもったいないほどの贅沢なシステムで、“いいオーディオで聴くレコード生活” を体験させてもらった。

粒子を感じるザラリとした質感。つい触れたくなる不思議な魅力私の一押しカラーは「グレー」。少しざらりとした触れ心地がたまらない

届いた箱を開けると、中にはパーツや部品が分かれて入っている。ダストカバー、本体、ターンテーブルやレコードマット、カウンターウェイトなど、それぞれ取り出してセッティングしていく。

組み立ての前に、「SL-50C」の仕様を簡単に紹介しておこう。コアレス・ダイレクトドライブ・モーターを採用。上位モデルと同等の回転精度(ワウ・フラッター0.025%)で、最新の回転制御技術の応用によって正確な回転を実現する。

搭載するトーンアームは、伝統のS字形ユニバーサル方式を継承しつつ、滑り軸受方式を採用して新設計。メインシャーシはMDF、プラッターはアルミダイカストを採用する。内部は、これまでのノウハウを活かし、音質に配慮した最適な回路設計を施しているという。

アルミダイカスト製プラッター

レコード再生環境に必須のフォノイコライザーも内蔵。カートリッジはMM型の「ortofon 2M Red」を付属。すでにカートリッジ装着済みのシェル(トーンアームの先端部分で、カートリッジを固定する部分)が入っているので、そのシェルをトーンアームの先に取りつけるだけでいい。

MM型フォノイコライザーも内蔵赤いカートリッジがモノトーンな本体に映える

きっと組み立てには苦労するだろう……と思っていたけれど、これが意外と簡単。説明書にある5つのステップの通り、順に部品をはめていけば、あっという間に完成した。高額なオーディオを前にすると身構えてしまいがちだけど、「SL-50C」は想像以上に設置しやすい。私と同じくステップアップを考える人がいたら、そこは安心してほしい。

本体の質量は、約7.1kgと程よくずっしり。脚部にはSL-50C用に最適化したというインシュレーターを搭載していて、設置はもちろん、音質も安定するそうだ。

外形寸法は43.0×35.3×12.8cm(幅×奥行き×高さ)。インシュレーターの位置は少し本体のやや内側にあるので、もしかすると奥行き35cmの家具の上にもギリ置けるかもしれないけれど、設置場所は最低40cmは確保しておきたい。

インシュレーターがしっかり支えてくれるおかげで、設置も音質も安定するそう

さて、ようやく念願の「SL-50C」を我が家に設置。実物を前にすると、画面越しに見て抱いていた印象がそのまま形になっていて感動した。

Technicsの従来モデルだと、精巧で高級感のある雰囲気で、存在感が強い印象があったけれど、「SL-50C」はちょっと違う。精緻に作り込まれているものの、主張は強すぎない。そこはかとない高級感はありつつ、“触れてもいい” と思える絶妙なバランス。背伸びしすぎないこの感じが、暮らしの空間に置くのにちょうどいい。

実際の質感は、少しざらりとした粒子を感じる触り心地。発表時のイメージ写真でも、きっとこの粒子感を感じられるだろうと踏んでいたのだけど、まさに想像通りだ。何度も触れたくなる、不思議な魅力がある。

今回借りたグレーは、3色のカラバリの中で、私の一押しだ。密度感のあるマットカラーで、無機質な雰囲気だけど、ほんのり温かみも感じられる。ヴィンテージ家具との相性もいいし、ステンレスなどのシルバー系とも合いそう。ニュートラルなカラーなので、どんな家具の上でもスッと馴染むはず。

左下に電源や回転数、そしてSTART/STOPボタンがある。なお、オート再生ではなくレコード盤が回るだけ。アームは自動で動かないので、オート再生に慣れている人は注意!

カラバリは他に、ブラックとテラコッタブラウンがある。特にテラコッタブラウンは珍しいレンガのような色味で、部屋のアクセントにぴったりだろう。

テラコッタブラウンブラックのカラーバリエーションもある

さて、今回はワイヤレスアクティブスピーカー「SC-CX700」との組み合わせ。「SL-50C」はBluetooth非対応のため、スピーカーとは有線接続が必要となる。スピーカーとケーブルで直接繋げば、それだけで音を鳴らす準備は万端だ。

出力はPHONO、LINEがあって、それぞれの端子の真ん中に切り替えスイッチセッティング完了!並べて置ける横幅の家具がなかったので、スピーカーは椅子の上に設置初心者でもわかる明確な変化。“いい音”が鳴ると、部屋の空気が変わる

ドキドキのセッティングを終え、いよいよレコード再生へ。最初に選んだのは、 Oasisの『(What’s The Story) Morning Glory? (30th Anniversary Deluxe Edition)』。ちょうど製品の発売時期に、Oasisの日本公演が開催されたこともあって、どうしても試聴に使いたくて急いで購入した一枚だ。

Oasis『(What’s The Story) Morning Glory? (30th Anniversary Deluxe Edition)』がお気に入りAmazon限定盤を入手。Sepia Marble Vinylが可愛い!レコードは黒以外で集める派

ちなみに、数ある作品の中からこれを選んだのは、芸人の永野さんがやっているYouTube番組「永野CHANNEL」のOasis特集に出演した私の推し、ニューヨークの嶋佐さんが “好きな曲BEST 3” の一位に「Champagne Supernova」を挙げていたから。好きな人の “好き” を辿るのは、音楽をもっと楽しくする近道だと思う。実際にそれ以来、すっかりハマってしまった。

余談はさておき、肝心のサウンドはどうだったのか。正直にいうと、最初「あれ?」と思った。いつもとは違和感があるのに、うまく説明できない。でも聴き進めていくうちに、楽曲を構成するたくさんの要素が、とても明瞭に見えていることに気づく。こんなにたくさんの音が入っていて、鳴っていて、こんなにもギターのサウンドが豊かだったのか!という感じ。音楽の奥行きを感じ取れる、リアルなサウンドだと思った。

普段レコードプレーヤーとBluetoothスピーカーの組み合わせで聴いていたので、セパレートのスピーカーになれば、再現性が違うのは当然だ。けれど、ただ音の広がり方や空間表現が変わったというだけじゃない。楽曲の層みたいな部分がクリアに見えて、それらが一体となって生まれる曲の厚みが伝わってくる。

Wet Leg『moisturizer』も最近のお気に入り。いつもと感じ方が変わって驚き

レコードを変えて、Wet Legの『moisturizer』をかけると、ここでも「あれ?」と違和感。1曲目「CPR」の冒頭、中毒性のある怪しげなベースとドラムが、普段はもっとブワッと広がり、音の境目が曖昧になっているような感覚があったけれど、Technicsのシステムで聴くと違う。低音がちゃんと鳴りつつも、前に出過ぎたり、滲んでしまったりしない。新しい曲のような新鮮さすら感じられて、ものすごく楽しく聴けた。

続けて、いつも愛聴しているサム・スミス『GLORIA』を再生。ボーカルの温度も感じられるようなサウンドが心地よい。音が消えていく余韻や、空気がスゥっと引いていく静けさの描写。音がない場面でも何か実感を得られるような、すごく不思議な感覚がある。雑味のない美しい音は、サム・スミスの楽曲ととても相性が良く感じた。

Technicsのアクティブワイヤレススピーカー「SC-CX700」

もちろん、音の変化には組み合わせたスピーカーの影響もかなり大きい。今回試した「SC-CX700」は、高解像度な本格サウンドを楽しめる高級スピーカーだ。レコードの音を余さず、実体のある姿で届けてくれるのはSC-CX700あってこそと思う。

空間の雰囲気も変える、ハイエンドなサウンドを楽しめる一方で、設置の手軽さも魅力。オーディオシステムの構築に必要なアンプやフォノイコライザーを内蔵しているので、上述したように、SL-50Cとはケーブルで繋ぐだけでいいのが楽ちんだ。

本来レコード再生環境というと、プレーヤーにスピーカー、アンプに……とあれこれ用意しなくちゃいけないけれど、家のスペースも限られるし、ステップアップで一気に機材を増やすなんて非現実的だ。SC-CX700なら「プレーヤー+スピーカー」で完結! 自動で音質を最適化する「Space Tune」機能もあるから、置き場所も問わずにいい音を楽しめるのが嬉しい。

操作はリモコン or 本体天面のタッチ操作で。Wi-FiやBluetoothでストリーミング再生も楽しめるから、一台あればなんでもできる

次は何を聴こうかな?とレコードを選んでいて、ふと気づいたのだが、再生を始めてからずっと、レコードシステムの目の前のソファに座りっぱなしだった。

冒頭で書いたように、普段は暮らしのBGM的にレコードを再生していて、オート再生ボタンを押したら、あとは生活に戻るだけ。なのにTechnicsで再生すると「聴くこと」に集中してしまって、ついベストポジションに収まってしまうのだ。ああ、これはレコードにハマりつつあるなと実感した。

少しだけ、オーディオルームを作る気持ちが分かった気がする。ほんの少しだけ……

音の話からはズレるけれど、Oasisのレコードのほかに、「SL-50C」を試すのに使いたいと思って準備したのが、透明なオレンジ色のアクリルのレコードマット。グレーと組み合わせたらきっとかわいいだろうと、音質効果そっちのけで選んだ。

実際置いてみると、予想通り!鮮やかなオレンジが映えてかわいい。カートリッジが赤いスケルトンカラーなので、少し遠目に見れば元からセットかのような雰囲気。ただ音楽を聴くためだけのものじゃなくて、こうしてインテリアとして楽しむ余白があるのも、「SL-50C」の魅力だと思う。

Amazonで買ったアクリルマット。厚みはチェックしてから買った方がよし低音を中心に音が引き締まるらしいけれど、私には正直そこまでの聴き分けは難しい……。でも、見た目が最高なので大満足!変わるのは音だけじゃない。暮らしと生活空間の質も上がる、理想の一台

“いいオーディオで聴くレコード生活”、その体験としてはもう、満点と言ってもいい。音の良さはもちろん、思わず聴き入ってしまう魅力があり、肩肘張らずに触れられるインテリアとしての佇まいも素敵。今年はワイヤレスイヤフォンといい、新しいTechnicsのカタチが、私の好みにことごとく刺さってくる。もう、全部好きだ。

私にとって「SL-50C」は、大好きな我が家の大切な場所に置きたくなる理想形でした

99,000円のレコードプレーヤーを「初心者からのステップアップ」と呼ぶには、一段が高すぎるかもしれない。けれど、実際に使ってみると、 レコード再生のアップデートだけじゃなくて、毎日の暮らしへの影響がすごくあったように思う。

ただ機材を変えて、高級オーディオの世界を体感するとか、いい音質を味わうというだけじゃなく、そこにあることで、生活の満足度も引き上げてくれるような存在だった。インテリアも音も、妥協なくアップデートしたい人に、ぜひおすすめしたい一台だ。