
皆さん、初めまして。DJ Mitsu the Beatsと申します。今月から4回にわたりAvid Pro Toolsの使い方に関する連載を担当することになりました。自分を選んでいただいたからには、意義のある記事になるように頑張ります。よろしくお願いします。
解説:DJ Mitsu the Beats|第1回
Pro Tools LE発売が大きなターニング・ポイント
自分とPro Toolsとの付き合いは非常に長く、1999年にDigi001とPro Tools LEを購入したのが最初です。それまではAKAI PROFESSIONALのハードウェア・サンプラーMPC2000を持ち歩いて、そのパラデータをスタジオのPro Toolsに流し込み、それからエンジニアさんにボーカルの録音やミックスをお願いして……という制作方法を取っていました。お仕事させていただいたエンジニアさんのほとんどがPro Toolsを使用していたこともあり、コンシューマー向けのPro Tools LEが発売されたことは、サンプラーのみで制作していた自分にとって大きなターニング・ポイントとなりました。それからは、Digi002、MBox、MBox 2と、オーディオI/Oやソフトをアップデートさせていきました。
当時の自分がPro Toolsを使っていた理由は、音質の向上とスタジオとの連携面での利便性でした。それから長年愛用しているうちにPro Toolsにもさまざまな機能が追加されていき、自分のPro Toolsとの向き合い方も変化していきます。それまでは“MPCでビート・メイクをしてPro Toolsで整える”という工程でしたが、徐々にPro Toolsで直接ビート・メイクをするようになっていったのです。今でも制作でハードウェア・サンプラーを使うことはありますが、Pro Toolsのみでほとんどの作業を行うことも多くなっています。
前置きが長くなりましたが、本連載ではハードウェア・サンプラーでの制作方法との違いにフォーカスし、Pro Toolsのみで行う自分なりのビート・メイクの方法をお届けします。制作工程を4回に分けて解説し、最終的に曲が出来上がるまでをお伝えする構成です。ぜひ聴きながら読み進めてください。
連載を通して︎DJ Mitsu the Beatsが制作しているビートの音源は、SoundCloudのサンレコ・チャンネルで公開中。スマホでご試聴の場合は、SoundCloudアプリのインストールをお忘れなく
https://www.rittor-music.co.jp/r/sr/202512/2/
グリッドを気にしないことが自分らしいビートにつながる
自分が普段ビートを作る際、ドラムから着手することが多いです。まず基本的な素材として、ドラムのループ素材(試聴ファイル名:DRUMLOOP1)、キックのワンショット(kick1)、スネアのワンショット(snare1)をそれぞれ1種類ずつ用意します。

筆者がビートを作る際に最初に着手するのはドラム。まずはドラムのループ素材、キックのワンショット、スネアのワンショットを用意する。ドラムのループ素材を用いる理由は、イレギュラーな音が入り込んでいて面白いサウンドになりやすいから
ドラムのループ素材を用いずにキック、スネア、ハットのワンショットからドラムを組むこともありますが、ループ素材にはイレギュラーな音が入っていたりするので想定外の味付け的な効果が生まれ面白くなりやすく、最近は準備段階でドラム・ループを用意するようにしています。
なお、このときループ素材はSpliceやLoopcloudなどのサブスクリプション・サービスからダウンロードすることが多いです。著作権を気にせず利用できる上に、キック一つでもかなりの種類がアーカイブされているので、ピアノやサンプリング・フレーズなどメインとなるループに合わせるドラムの音色を変えていくことも簡単です。
ビートのBPMは、作ろうとしている楽曲をイメージしながら最初に決めてしまいます。今回は90BPMに設定しました。BPMを決めたら、用意した素材をPro Toolsの編集ウィンドウに並べていきましょう。まずは“kick1”と“snare1”だけのループを組んでいきます。素材を並べるときはグリッドを気にせず、感覚的に少しずつずらしながら並べていくことで、自分らしいビートを表現することができると思います。

キックとスネアの波形をドラム・ループに合わせていく。グリッドからずらすことで、“自分らしいビート”につながっていく
その後、“DRUMLOOP1”から使えそうな部分……ここではキック、スネア、ハイハットを切り出し、先に並べておいた“kick1”と“snare1”のクリップに合わせ重ねていきます(DRUMLOOP2)。このときも自分の耳で聴きながら波形を少しずつ動かしつつ、素材を配置する場所を決めます(edit1)。

上から3つのトラックが、ドラム・ループから切り出したキック、スネア、ハットの波形。これらを先に並べておいた“kick1”(上から4番目のトラック)と“snare1”(一番下のトラック)の波形に合わせ、かつタイミングを少しずらしながら貼り付けていく。ここまででドラム・トラックのループ制作は一旦完了。試聴ファイル名は“edit1”
個人的に、こうして視覚的かつ感覚的に波形を動かしながらグルーヴを作る際の作業のやりやすさも、Pro Toolsでビート・メイクする利点だと感じています。“ほかのDAWでもできるのでは?”と思う方もいるかもしれませんが、いろいろなDAWソフトを使った上で編集やスタジオとの連携のやりやすさなどを加味すると、Pro Toolsの総合力が自分の制作工程にとって重要だと感じています。
話を戻します。ここまで完成したループにベースやキーボード、ほかのサンプルのループなどを乗せていくために、この段階で軽く音を整えます。具体的には、Spliceなどの素材は音量が大きいものが多いので音量を調整することもありますし、ループのイメージを広げるために軽くコンプやリバーブなどをかけることもあります。このとき、Channel Stripなどのプラグインで素材ごとにキャラクターを作ってしまうこともあります。

ドラム・ループができあがったら、Pro Tools付属プラグインChannel Stripなどで各パートのキャラクターを作り込むことが多い。Channel Stripは、EQやダイナミクス・エフェクトが統合されたもの。画像は“kick1”のトラックにインサートした設定だ
そうしてある程度最初のイメージに沿ったドラム・ループが作成できたら(edit2)、次の作業に移っていきます。
というわけで、続きはまた第2回にて。
DJ Mitsu the Beats
【Profile】仙台を拠点に活動するプロデューサー、DJ、トラック・メイカー。1996年結のヒップホップ・グループGAGLEのビート・メイカー兼DJ。繊細でメロディアスなトラック・メイキングと、ジャズ、ソウル、ファンクなど多彩なジャンルを取り入れた、アナログ感と温かみのあるサウンドで多くのリスナーを魅了している。ソロでも精力的に活動し、日本を代表するビート・メイカーとしての地位を確立している。
【Recent work】
『Gtg feat. reina』
DJ Mitsu the Beats
(インセンスミュージックワークス)

LINE UP
Pro Tools Intro:無料|Pro Tools Artist:15,290円(年間サブスク版)、30,580円(永続ライセンス版)|Pro Tools Studio:46,090円(年間サブスク版)、92,290円(永続ライセンス版)|Pro Tools Ultimate:92,290円(年間サブスク版)、231,000円(永続ライセンス版)
REQUIREMENTS
Mac:最新版のmacOS 15.4.x/14.7.x/13.7.x、M4、M3、M2、M1あるいはINTEL Dual Core i5より速いCPU
Windows:Windows 10(22H2)/11(24H2/23H2)、64ビットINTEL Coreプロセッサー(i3 2GHzより速いCPUを推奨)
共通:15GB以上の空きディスク容量
*上記はPro Tools 2025.6時点
