12月21日の全日本フィギュアスケート選手権のフリーの演技を終えた紀平梨花は、これからの世界との戦い、ロシア勢との戦いへ向けてこう話していた。 「4回転サルコウを入れた(構成の)フリーの練習はできていたので、その難易度を下げてしまったのは悔しい。これからはケガの影響で入れられてなかったルッツを絶対に戻したいという気持ちがあるので、ルッツを入れてもアクセルを崩さず。アクセルとルッツを入れても4回転サルコウを崩さないように。4回転サルコウを入れてもアクセルを崩さないように何度も練習をして、世界選手権では全部入ったプログラムでショート、フリーともにノーミスができるようにしたい」  今季の紀平はシーズンイン直前に左足首を捻挫。その影響もあり、ショートプログラム(SP)では最後に入れていた3回転ルッツを3回転ループに変えたため、基礎点が1.1点低くなっていた。そしてフリーでは以前は3回転ルッツを2回入れていたが、今季は代わりに3回転フリップを1本増やし、最後に入れていた3回転サルコウをダブルアクセルからの3連続ジャンプに組み込み、最後のジャンプを3回転ループにしている。  その構成で後半に入れている3回転フリップ+3回転トーループと3回転ループを3回転ルッツに変更すれば、基礎点は1.76点高くなる計算になる。さらに4回転サルコウを入れれば、3回転を最初に入れた時より基礎点は5.4点アップ。合計で7.11点高くなる。  また、SPで3回転フリップ+3回転トーループを基礎点が1.1倍になる後半に持ってくれば、ルッツを後半に入れていた時に比べて基礎点は0.56点高くなる。今季序盤の演技構成よりSPでは1.46点、フリーも合わせると基礎点が8.57点高くなる構成を目指しているのだ。  12月25日からのロシア選手権で、アンナ・シェルバコワとアリョーナ・コストルナヤが記録した261.87点と259.83点は驚異的だった。しかもシェルバコワは4回転フリップで着氷を乱し、0.94点減点されての得点だった。シェルバコワはグランプリ(GP)ファイナルよりミスの少ない滑りで、ファイナルより各要素のGOE(出来ばえ点)加点は高く、演技構成点もファイナルでは全項目が8点台だったのに対しロシア選手権ではすべて9点台になっている。  一方、コストルナヤのSPは、難しいつなぎを駆使して高得点を狙うプログラムがさらに滑り込まれてきており、ジャンプも着氷後の流れの美しさが目を引く出来。GOE加点はジャッジのほぼすべてが4点と5点を付けたうえ、演技構成点は9点台中盤でファイナルより2.34点多い得点。全体的に国際大会の判定より高くなっていた。今後、シェルバコワが4回転などの精度を上げてきたり、アレクサンドラ・トゥルソワがすべてのジャンプを揃えてくればさらなる高得点を出してくる可能性はある。ただ、当面、紀平がターゲットとすべきはGPファイナルでコストルナヤが出している「247.59点」となるだろう。  その点ではSPでの絶対条件は、連続ジャンプを基礎点が1.1倍になる後半に持ってくることだ。それはロシアの3人が難なくやっていることでもある。紀平の連続ジャンプは3回転フリップ+3回転トーループだが、それができればコストルナヤと競り合えるようになる。演技構成点も、SPで83.97点を出した世界国別対抗の時は35.80点で、コストルナヤのファイナルの35.97点とは僅差。あとはGOE加点の差まで持ち込める。  そしてフリーでは3回転ルッツ2本を入れられるだけでも、フリップ2本でルッツが1本のコストルナヤをわずかに上回る計算になり、4回転サルコウが入ればさらに基礎点は高くなり、完璧に滑れば数字的には250点超えも可能になってくる。  トゥルソワがファイナルで「4回転ループの導入も視野に入れている」と話していたように、現在の高難度ジャンプ合戦はさらに激化する可能性もある。  ただ、いま紀平に必要なのは、まずは3回転ルッツが跳べるようにケガを治して、4回転サルコウを入れた構成の精度を上げること。そして、世界選手権に向けてしっかりと体調のピークを合わせることだ。  今季の女子フギュアスケートを席巻するロシアの3人に、世界で唯一対抗できる存在であることを、紀平には3月の世界選手権で証明してもらいたい。