老後を健康に過ごすには、どうすればいいのか。スタンフォード大学心理学部のローラ・L・カーステンセン教授は「遺伝子は病気になるリスクを示すが、寿命までは決めていない。健康な体でいられるかどうかは自身の選択や行動によるところが大きく、注目したい研究がいくつかある」という――。(第3回)


※本稿は、ローラ・L・カーステンセン(著)、米田隆(監修)、二木夢子(訳)『スタンフォード式 よりよき人生の科学』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。


屋外で走っているシニア夫婦

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“若いときの生活習慣”が老後を苦しめる

人は、危険な行動の結果としての死を軽視しがちだ。死ねば少なくとも苦しみは終わるからだ。でも、生活の質(QOL)の観点から重要なのは、死の瞬間、つまりあの世にたどり着いた瞬間ではない。永遠という空港に着陸する前に、どれくらいの時間を空港の上空で旋回して過ごすかということだ。


そう考えると、食習慣の乱れと運動不足で肥満になったときの最も有害な影響は、心筋梗塞による突然死ではなく、数十年にわたる疲労感、呼吸困難、糖尿病や関節炎による身体の不自由なのかもしれない。


飲酒運転のような危険な行為は、死にいたる危険があるのはもちろん、麻痺や慢性の痛みにもつながる。不健康な習慣の副作用のなかでそれほど重大でないものも、長年のあいだに積み重なり、80歳台、90歳台になってから悩まされることもある。タバコの吸いすぎで50年も咳に悩まされることを想像してみてほしい。


それでも、長生きしやすくなる習慣を身につけることは、きわめて不明確な報酬のためにずいぶん多くの努力を要するように感じられるかもしれない。というのも、長寿に関心のある人は大量の指示を浴びせられ、しかもそれぞれが矛盾していたりするからだ。


“50歳までの選択”が老後を左右する

脂質を避ける(ただしオメガ3脂肪酸は除く)。赤ワインを飲む(ただし飲みすぎない)。昔はビタミンDのカプセルの摂取を勧められた(でもいまは過剰摂取が問題になっている)。そのうえ、取り入れるべき習慣を数限りなく勧められる。ヨガ、瞑想、脳を鍛えるトレーニング(脳トレ)、全粒粉への切り替え、抗酸化作用の高い食べ物の摂取……。すべて名案だ。こうした対策があなたの幸せにどれだけ影響を及ぼすかは、すぐに実感できる。だが、それで本当に寿命が延びるかどうかは、どうやってわかるのだろうか。


それについては、あまり深く考えすぎないほうがいいのかもしれない。研究によると、長寿に大きな影響を及ぼしているのはごく限られた要素であり、それらはみな常識的なことだという。


ハーバード大学では、1930年代から現在まで、同大学の卒業生とボストン市中心部で生まれた人の生涯にわたる健康状態を追跡調査している。その研究によると、長寿は生活習慣上の7つの選択に左右され、50歳までの選択が70歳以降の健康を予測するための優れた手がかりになるという。その選択は、①禁煙、②アルコールを乱用しないこと、③定期的な運動、④体重のコントロール、⑤安定した結婚生活、⑥教育、そして⑦人生のトラブルに見舞われたときの優れた対処メカニズムである。


酒類、タバコ

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