高市早苗氏が女性初の総理大臣に就任したことに対し、女性の政治家や研究者、ジャーナリストの中から、批判や落胆の声が上がっている。武蔵大学社会学部教授の千田有紀さんは「彼女らの、『女性の総理大臣や自民党総裁は、選択的夫婦別姓などの女性にかんする政策こそをやるべきだ』という姿勢は、個人を女性という属性に押し込めているのではないか」という――。


晴れの日の国会議事堂

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ジェンダーギャップ改善が「喜べない」

日本のジェンダーギャップ指数は現在、118位である。先進国のなかでは際立って低いこの数字はあまり変化することもなく、日本の女性の地位の低さを示すものとして、長い間、嘆かれてきた。


ところが、高市早苗さんが自民党の総裁に選出された際には、「高市さんのせいで、日本のジェンダーギャップ指数があがってしまう」、「しかもジェンダーギャップ指数は、過去50年間の女性首相の在任期間が評価されるから、その影響は50年にも及んでしまう」とまでの声が、女性の進出を歓迎するひとたちの間で起こったことに少々驚いた。フェミニストの社会学者上野千鶴子さんも、ジェンダーギャップ指数に触れながら、「初の女性首相が誕生するかもしれない、と聞いてもうれしくない」とSNSにポストしている。





https://x.com/ueno_wan/status/1974822690893742402


初の女性首相が誕生するかもしれない、と聞いてもうれしくない。来年は世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で日本のランキングが上がるだろう。だからといって女性に優しい政治になるわけではない。


— 上野千鶴子 (@ueno_wan) October 5, 2025


フェミニズムは、たんに女性が「男並み」になることを求めるのではなく、社会構造自体の変化を求める思想である。だからたんに女性の数が増えればいいというものではない。


それにしても、フェミニストの学者、政治家、活動家の誰もが、高市自民党総裁の選出を喜ばないどころか、批判を繰り出す急先鋒となったのは、興味深い現象であった。立場は違えど、批判の前に祝意を述べた辻元清美議員が、際立ったくらいだ。そして、フェミニズムに関心のないひとたちのほうが、「いままでジェンダーギャップ指数が低いと文句をいっていたフェミニストたちが、高市さんによってジェンダーギャップ指数があがることに意味がないと言い出すとは、どういうことだ」と首をひねるのも、また当然だったといえるだろう。


焦点になった「選択的夫婦別姓」

高市さんの評価において、フェミニストの一番の焦点となっていたのは、選択的夫婦別姓である。


例えば田嶋陽子さんは、選択的夫婦別姓に反対していることをもって、自民党総裁には高市さんより、林芳正さんや小泉進次郎さんに期待を寄せていた。9月21日に放送されたテレビ番組では「経済政策がどうたらこうたらはいいかもしれないけど、それはだれでも言える」「例えば、高市さんなんか、国民の半分となる女性の問題なんかに、ぜんぜん背中を向けてこたえない。要するに国民の半分に関心がない人を、どう考えても、推すわけにはいかない」と述べていたという。