
国際通貨基金(IMF)は14日公表した半期に1度の国際金融安定性報告書で、世界の市場が貿易戦争や地政学的緊張、巨額の財政赤字といったリスクに対し、あまりにも楽観的になっていると警告、すでに割高な資産価格と相まって、市場の「無秩序な」調整が起きる可能性が高まっていると述べた。(2025年 ロイター/Benoit Tessier)
[ワシントン 14日 ロイター] – 国際通貨基金(IMF)は14日公表した半期に1度の国際金融安定性報告書で、世界の市場が貿易戦争や地政学的緊張、巨額の財政赤字といったリスクに対し、あまりにも楽観的になっていると警告、すでに割高な資産価格と相まって、市場の「無秩序な」調整が起きる可能性が高まっていると述べた。
「穏やかな表面の下で、金融システムの複数の部分で地盤が変化しており、脆弱性が生じている」と指摘。「バリュエーションモデルによれば、リスク資産の価格はファンダメンタルズを大幅に上回っており、マイナスのショックが生じた場合に、無秩序な調整が起きる確率が高まっている」と述べた。
一部のネガティブな経済指標にもかかわらず、株式と社債のバリュエーションは「かなり割高」な状態にあるとし、AI関連の大型株への熱狂が歴史的な株式市場の集中を引き起こしているとの見方を示した。
高いバリュエーションを予想されるリターンで正当化できなければ「突然の急激な調整」が起きるリスクがあるとしている。
All of Wall Street’s highest turnover stocks in the past five sessions are part of the ‘AI trade’, except for Apple
<資産価格、危険なバブル領域を示唆>
国債市場の分析でも、財政赤字の拡大が市場の機能に圧力をかけていることが示されている。
これまでのところ、債券市場はおおむね安定しているものの、利回りが急騰すれば、銀行のバランスシートに負担をかけ、投資信託のようなオープンエンド型ファンドに圧力をかける可能性があるとの見方を示した。
IMFのトビアス・エイドリアン金融資本市場局長は14日、ワシントンで記者会見し、タームプレミアム(投資家が短期債をロールオーバーする代わりに長期債を保有する場合に求めるリスクプレミアム)が2009年以前の水準に達していると警告。供給が増えるにつれて、今後も上昇する可能性があると述べた。
IMFは先週、銀行のバランスシートに相当なドル建てエクスポージャーがあり、資金調達ショックの影響を受けやすくなっているとの見方を示していた。ドルは米連邦準備理事会(FRB)の追加緩和期待やトランプ大統領の貿易政策を背景に通貨バスケットに対して今年9%近く下落している。
エイドリアン氏は「金融状況は緩和的だが、マクロ的な金融リスクは依然として残っている」と述べた。
IMFは、中央銀行は関税に伴うインフレリスクに警戒を怠ってはならず、リスク資産の一段のバリュエーション急騰を最小限に抑えるため、金融緩和には慎重な姿勢で臨むべきだと主張した。
中央銀行の独立性は、市場の期待の安定と中銀の責務履行に「極めて重要」だとも指摘。財政赤字を抑制し、強靱な債券市場を維持するため「緊急の財政調整」が必要だとも呼びかけた。
<ノンバンク金融機関による伝染リスク>
銀行と、相対的に規制の緩いノンバンク金融機関との相互連関性が高まっており、プライベートクレジットや暗号資産(仮想通貨)などのセクターに起因するショックが生じた場合、ショックが増幅されるとの見方も示した。
IMFは長年にわたり、保険会社、年金基金、ヘッジファンドといったノンバンク金融機関の監督にむらがあると警鐘を鳴らしてきたが、今回の報告書では、ノンバンク金融機関が拡大を続け、現在では世界の金融資産の約半分を保有していると警告。米国と欧州では、多くの銀行が、高水準の損失吸収資本を上回るノンバンク金融機関向けエクスポージャーを抱えていると指摘した。
IMFの分析によると、ノンバンク金融機関が全てのクレジットラインを引き出した場合、米国の銀行の約10%、欧州の銀行の約30%で自己資本に相当な打撃が及ぶとみられる。
「ノンバンク部門の脆弱性は相互に関連している」とし「中核的な銀行システムに素早く伝播し、ショックが増幅され、危機管理が複雑になる可能性がある」としている。
また、各国政府に対し、ステーブルコインを含め、暗号資産に対する包括的な政策対応が必要と呼びかけた。暗号資産の導入で、政府による自国通貨の管理が弱まり、伝統的な銀行システムが混乱する恐れがあるという。
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