ミケランジェロの彫刻「ピエタ(聖母子像)」をドローンで再現。ノバ社の軽量ドローンは、本番中交代で休憩を取り、再充電した後再び飛び立つようプログラミングされている。(Photograph by Studio Davide Monteleone)

 2025年9月13日の晩、カトリック教会の聖年を記念してバチカンのサン・ピエトロ広場で初となるコンサートが開かれ、上空でヨーロッパ最大のドローンショーが展開された。

 音楽に合わせて3000機のドローンがサン・ピエトロ大聖堂の空に舞い上がり、それぞれの位置につくと、16世紀の巨匠ミケランジェロによるフレスコ画「アダムの創造」の一部や、ドローン版「ピエタ(聖母子像)」、2025年に他界したフランシスコ教皇の肖像画が夜空に浮かび上がった。

 さらに、3Dのハートや平和の象徴であるハトなど、たくさんの小さな光の点が入れ替わって新しい絵が現れるたびに、地上からは歓声が上がった。

システィーナ礼拝堂に描かれている名画「アダムの創造」の一部をドローンで再現。(Photograph by Studio Davide Monteleone)

システィーナ礼拝堂に描かれている名画「アダムの創造」の一部をドローンで再現。(Photograph by Studio Davide Monteleone)

故フランシスコ教皇の肖像画が空に現れると、群衆から拍手が沸き起こった。(Photograph by Studio Davide Monteleone)

故フランシスコ教皇の肖像画が空に現れると、群衆から拍手が沸き起こった。(Photograph by Studio Davide Monteleone)

 枢機卿やその他の聖職者、故ネルソン・マンデラ氏の妻で活動家のグラサ・マシェル・マンデラ氏、米国人ミュージシャンのファレル・ウィリアムス氏らが平和と一致を呼びかけるスピーチを行い、ドローンが空に描き出した巨大な「JOY(喜び)」の文字で、コンサートは閉幕した。

 ローマ教皇庁の許可を得てショーを指揮したのは、キンバル・マスク氏の「ノバ・スカイ・ストーリーズ」社だ。ショーの完成には2年近い年月を要したが、それはノバが期待するような、小さなドローンによる光の点だけで作られる芸術の黄金時代を予感させる瞬間だった。(参考記事:「花火はもはや「持続不可能」か、ドローンショーは解決策になる?」)

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数千個の光の点

 ショーの数日前、バチカン市国のほとんど使われていない線路や閉鎖された駐車場にドローンの充電基地が設置され、ノバ社のドローンが本番に備えてハイテク働きバチのようにぶんぶんと音を立てて充電されていた。

 1機の重さがわずか340グラムしかない小さなドローンは、1600万の色を作り出せる。イーロン・マスク氏の弟でノバの最高経営責任者を務めるキンバル・マスク氏は、2024年初頭、教皇フランシスコが存命中にドローンショーのアイディアをバチカンに持ち掛けた。

歴史あるサン・ピエトロ広場での初のコンサートと、ヨーロッパ最大のドローンショーを見るために集まった人々。(Video by Studio Davide Monteleone)

 その後18カ月にわたって、ノバのチームは地球上で最も秘密のベールに包まれた場所で許可を取り、アクセスを交渉し、きめ細かな現地への訪問計画を立てるなど、いま思えば奇跡のような技をやってのけた。

 その間に教皇フランシスコが亡くなり、一時は計画の先行きが不透明になった。だが、マスク氏は新たに選出された米国人初の教皇レオ14世から、計画の続行を認める手紙を受け取った。(参考記事:「伝統ある教皇名「レオ」 歴史と重みを背負うレオ14世の思い」)

 ドローンの操縦技術は、ノバ・スカイ・ストーリーズ独自のものだ。ドローンの製造から、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェアの開発に至るまですべて社内で行った。そのため、何か問題が起こってもすべてその場で解決に当たれる。約60人から成る中心チームにはエンジニアもプログラマーも属し、ヘルプラインに電話をかける必要もない。

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