
ナショナル ジオグラフィックで行われた記者会見の舞台上で公開されたニジェールサウルスの復元骨格と頭部。1999年に発見され、その後組み立てられたこれらの骨は、ニジェールサウルスが特異な植物食恐竜であったことを示している。(Photograph by Bill O’Leary, The The Washington Post/Getty Images)
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500本の歯を持ち、そのすべてが14日ごとに生え変わっていた恐竜。それがニジェールサウルス・タケティ(Nigersaurus taqueti)だ。人間の歯は多くても32本だが、その15倍を超える歯で、彼らは背の低い植物を食べていたと、古生物学者でナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)であるポール・セレノ氏は述べている。
この恐竜の体重は、マルミミゾウの成体と同程度の約2トン、鼻から尾の先までの全長は約9メートルあったと考えられている。植物食の彼らは、およそ1億500万年前、現在のニジェール共和国にあたる西アフリカの低地を歩き回っていた。(参考記事:「ポール・セレノ氏がサハラ砂漠で55トンの恐竜化石を掘り出す方法」)
ニジェールサウルスは、進化の歴史において、これまでに登場した草食(植物食)動物の中で最も効率的に食物を摂取できる種のひとつだ。ニジェールサウルスと、彼らが歯という強みを生かしてどのように暮らしていたかを紹介しよう。
タケ氏がニジェールで見つけた骨化石の密集層
ニジェールサウルスの骨が古生物学者たちの目にとまったのは、20世紀半ばのことだ。1965〜1972年にかけて、フランス人古生物学者のフィリップ・タケ氏は、それ以前の化石記録をもとに、ニジェールにあるボーンベッド(骨化石密集層、不完全な骨が1カ所に集まった状態)の存在を確認した。
このときの調査により、背中の帆とくちばし状の口を特徴とするオウラノサウルスや、サルコスクスと呼ばれるワニなど、複数の古生物種が新たに発見された。(参考記事:「多様な古代ワニ5種、サハラで化石発見」)
なかでもガドファウアと呼ばれる発掘現場は特に有望で、大型恐竜の骨であふれていた。これらの恐竜に関して、タケ氏が詳しい記録を残したり、名前をつけたりすることはなかった。なぜなら、一帯には調べるべき化石が大量に埋まっていたからだ。
発掘が本格的に再開されたのは30年後。別の古生物学者のチームがやってきたときのことだった。
1997年、セレノ氏率いる発掘チームにより、ガドファウアに埋まっている恐竜の骨が改めて掘り出された。「一帯は人里から遠く離れており、気温が高く、砂の移動も激しいため、作業を進めるのは簡単ではありませんでした」。米ミシガン大学の古生物学者で、ニジェールサウルスの命名にも関わったジェフ・ウィルソン・マンティラ氏はそう述べている。
一つひとつの骨片は非常に繊細で、中には光が透けるほど薄いものもあった。それでも、慎重に発掘、処理、研究を進めた結果、タケ氏が発見したこの竜脚類は、これまでに知られていなかった新種の恐竜だと判明した。
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