イングランド銀行(英中央銀行)は7日、政策金利を4%に引き下げると発表した。利下げは市場予想通り。従来は4.25%だった。
インフレ率が4%に達する見通しと雇用市場の減速という相反する要因のはざまで、約2年ぶりの低水準に引き下げた。決定は予想以上の接戦だった。
ベイリー総裁は、今後の金利軌道には「本物の不確実性」があると述べた。市場では追加利下げについて、11月で五分五分と見方が後退した。
金融政策委員会(MPC)メンバー9人のうち5人が利下げを支持、4人が据え置きを支持した。1回目の投票では利下げ幅の違いで票が3通りに分かれ、いずれの意見も過半数に届かなかったため、再投票の末に0.25ポイントの利下げが決定された。MPCの政策決定で再投票が必要になったのは、28年間の歴史の中で初めて。

ベイリー総裁
Source: Bloomberg
発表を受け、ポンドは対ドルで上昇。英国債は下落した。
多くのエコノミストは据え置きにこれほど多くの支持が集まるとは予測していなかった。票が割れたことは、英中銀内で経済成長鈍化とインフレ再燃という複雑な要因にどう対応すべきか、意見の隔たりが大きいことを浮き彫りにした。
ベイリー総裁は記者団に「金利の動きは引き続き下方向だ」とした上で、「しかしながら、軌道には本物の不確実性がある」と述べた。
中銀は利下げに当たり、段階的かつ慎重な金融緩和の方針をあらためて打ち出した。同時に経済に表れつつあるたるみや、労働需要の冷え込みにも言及した。
一方で、インフレ上振れリスクが「5月以降やや高まった」とも指摘し、特に食品価格の上昇を挙げた。物価上昇率は9月に4%でピークを付けると見込まれ、従来予測の3.7%から引き上げられた。
MPCは二次的波及効果に対し「引き続き警戒」する姿勢を示した。

経済成長については、1-3月(第1四半期)の力強い成長を受けて、2025年の成長見通しを小幅に引き上げ1.25%としたものの、基調としては「依然として低調だ」との見方を維持した。
また、利下げにより金融政策の景気抑制効果が弱まりつつあることも指摘し、今後の追加利下げは、中期的にインフレ鈍化がどこまで進むか次第だとした。
議事要旨では「景気抑制的な金融政策を緩和するタイミングとペースは、基調的なディスインフレ圧力がどの程度弱まるかに左右される」と説明した。
再投票についてベイリー総裁は「票の分布としては、据え置きよりも利下げに傾いていた。2回目の投票を行うのが適切だと判断した」と述べ、「最終的に決定に至ることが何より重要だ」と付け加えた。
外部委員のテイラー氏は当初、0.5ポイントの利下げを支持していたが、最終的には多数派を形成するために0.25ポイントの利下げに賛成した。
ロンバルデリ副総裁、チーフエコノミストのピル氏、外部委員のマン氏とグリーン氏の4人は、利下げに反対した。
QTのリスク警告
英中銀はまた、政策判断と併せて発表したリポートで、保有する長期国債の売却が英国債市場の一角で緊張を強める恐れがあると指摘し、バランスシート縮小ペースの鈍化が必要かもしれないとの認識を示した。 量的引き締め(QT)に関する年次決定を前に政策当局者と投資家に情報を提供する目的でまとめられた分析の中で、英中銀当局者は長期資産への需要低下に言及し、こうした状況下で売却を進めれば、英国債市場の流動性に「大きな影響」を及ぼし得ると警告。
「世界的な経済政策の不確実性、各国による高水準の国債発行、国内債券市場の構造的な変化が長期国債の需要を後退させ、タームプレミアムを押し上げた」と説明し、「英国債市場にもこうした変化があり、QTが以前よりも市場の機能に大きな影響を及ぼすリスクがある」と論じた。

このリポートで英中銀は9月に下すQTを巡る決定で、広く見込まれている通りバランスシート縮小ペースを鈍化させる舞台を整えた。英国や米国など先進国の中銀の多くは、金融危機以降に積み上げたバランスシートの縮小を図っているが、債券市場を不安定化させるリスクから当局者は慎重な姿勢を維持している。
リポートの発表を受けて英国の超長期債はアウトパフォームし、10年債と30年債の利回り格差は2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)縮小した。
BNPパリバのエコノミスト、ダニ・ストイロバ氏は、今回のリポートは「MPCが9月に少なくとも一部のQT縮小を発表する可能性が高い」との市場の期待を後押しするだろうと述べた。

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原題:BOE Cuts Rates to Two-Year Low After Unprecedented Re-Vote (1)、BOE Sees Risk of Greater QT Impact in Hint at Slowing Pace (2)(抜粋)
(最終5段落に量的引き締めに関するリポートの内容を加えます)
