これはイタチザメを一瞬で追い払うTorpedo sinuspersiciの動画。ダイバーのアリ・アンサール氏がモルディブで撮影。同様にホホジロザメを撃退するシビレエイも観察されている。

 強力な顎(あご)と毒への強い耐性をもつホホジロザメやイタチザメなどの大きなサメはほとんど何でも食べられる。人の命を奪うほどの猛毒のウミヘビ、約15センチのとげをもつエイも、海の頂点捕食者にとっては軽食のようなものだ。腹をすかせた大きなサメから逃げられる海洋生物はいないと長年考えられてきたが、6月25日付で学術誌「Ethology」に発表された論文によれば、サメから逃れる手段を進化させている魚たちがいることがわかった。シビレエイだ。

 シビレエイが発電器官を狩りのために使用することは知られていたが、今回、防御にも使うことが初めて示された。その放電は強力で、ホホジロザメもイタチザメも追い払えるという。

「シビレエイの放電が、捕食者に対する抑止力として、それほど効果的だとは思っていませんでした。しかし今、極めて有効な防御手段だと確信しています」と研究を率いたヤニス・パパスタマティウ氏は話す。氏は米フロリダ国際大学の生態学者で、サメをはじめとする海の捕食者を研究している。(参考記事:「史上最悪のサメ襲撃事件の恐るべき真相、米海軍最大の悲劇」)

大型の電圧は200ボルト以上

 シビレエイは世界中の温帯と熱帯の海に生息し、ほとんどの種は体長1メートル以下だ。しかし、Tetronarce nobilianaなど、体長2メートル、体重100キロ近くに達する種もいる。

 これらの大きなシビレエイは200ボルト以上の電圧を発生させられる。これは人間を吹き飛ばすのに十分な強さだ。

 エイの神経系が刺激を受けると、頭の両側にある腎臓のような器官から荷電イオンが放出される。この放電は通常、小さな動物を捕食するために使われる。

 ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)でもあるパパスタマティウ氏によれば、シビレエイは人間や大きなサメにも臆せず近づくことで知られているという。「一般的に、それほど大胆な行動をとるのは、防御力にかなりの自信があるためです」

ホホジロザメが次はシビレエイをスルー

 パパスタマティウ氏は2018年、メキシコのグアダルーペ島沖でホホジロザメの捕食行動を研究していたとき、シビレエイの大胆さを初めて目の当たりにした。パパスタマティウ氏らは研究のため、6頭のサメの背びれにカメラを取り付けていた。(参考記事:「【動画】ホホジロザメがダイバーの入った檻に突入」)

 そのカメラに収められていたある動画で、ホホジロザメがゴマフシビレエイ(Tetronarce californica)に接近した。サメが攻撃可能な距離に近づくと、エイは胸びれをカップのような形にして、獲物を攻撃するときの典型的な姿勢をとった。

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