南米チリのアタカマ砂漠、標高約2,647mのセロ・パチョン山に建設されたヴェラ・C・ルービン天文台。乾燥した空気のため、夜空の観測に最適な場所にあるこの新しい望遠鏡が、これまでにない規模の宇宙観測を始めている。
1978年にダークマター(暗黒物質)の存在を示す証拠を発見した天文学者にちなんで名付けられたこの天文台は、約200億の銀河、銀河系内の170億の星、1,000万の超新星、さらには太陽系内の無数の小天体を明らかにすると期待されている。
「わたしたちは、いずれ人々の想像を超えるような発見をすることになるでしょう」と、ルービン天文台の主任科学者であるアンソニー・タイソンは語る。「それが何になるのかはまだ分かりません。未知のものだからです。非常に異常なものである可能性もあります」
ルービン天文台が集める前例のない天文学的データは、「宇宙と時間のレガシー調査(Legacy Survey of Space and Time)」という10年にわたる計画の一部として収集される。この大規模な調査の本格的な観測は今年後半にスタート予定だが、6月下旬に最初の観測画像が一般公開された。
この前例のない調査は、太陽系の初期形成プロセス、宇宙で起きるエ爆発現象、そして「ダークエネルギー」と呼ばれる謎の力の正体など、宇宙に関する根本的な問いに答える可能性がある。
ワシントン大学教授であり、ルービン天文台プロジェクトのメンバーであるマリオ・ユリッチはこう述べている。「通常は、こうした疑問のひとつに答えるために、専用の望遠鏡やプロジェクトが立ち上げられます。しかし、ルービン天文台は、たったひとつの装置でこれらすべての問いに迫ることができると期待されているのです」
ルービン天文台は今後10年かけて、宇宙の高解像度“タイムラプス”を作成する。毎日約20テラバイト(Netflixを3年間連続でストリーミングしたのと同等)のデータを生成し、10年後には合計6万テラバイトに達すると見込まれている。初年度だけで、これまでの全光学天文台が集めたデータ量を超える規模だ。
「この規模になると、ほぼ完全に自動化されたソフトウェアが必要となります。人間にはこれらの画像すべてを処理したり目を通すことはできません」とユリッチは言う。「ルービン天文台が空から収集するピクセルの大半は、人間の目に触れることはないでしょう。“ソフトウェアの目”をつくって、全画像から最も異常な天体を特定する必要があるのです」
それらの異常天体──ほかの太陽系から飛来した小惑星、恒星を飲み込むほどの超大質量ブラックホール、未知の高エネルギー爆発など──には、宇宙の仕組みに関する秘密が隠されている。
「こうした望遠鏡をつくるというのは、特定分野向けに4台か5台の望遠鏡をつくるのと同じです」とユリッチは言う。「でも、それを一度に全部できてしまうのが、ルービン天文台の凄さなんです」

セロ・パチョン山の山頂に建設されたヴェラ・C・ルービン天文台。Photograph: NSF-DOE Vera C. Rubin Observatory/A. Pizarro D.
驚くべきエンジニアリングの成果
10階建ての建物に設置されたルービン天文台には、直径8.4mの主鏡と、これまでに作られた中で最大の3,200メガピクセルのデジタルカメラが搭載されている。望遠鏡は専用の架台の上で回転し、30秒間の露光で空を撮影した後、すぐに別の位置に向きを変えることができる。ルービン天文台は毎晩約1,000枚の画像を撮影し、南半球の空全体を3~4日ごとに精細に記録する。
