
金価格はトランプ米大統領が関税戦争をエスカレートさせるのと歩調を合わせて過去最高値を次々と更新し、4月11日には現物が1オンス=3245.28ドルと再び史上最高値を付けた。写真は金地金。独ミュンヘンで1月撮影(2025年 ロイター/Angelika Warmuth)
[ローンセストン(オーストラリア) 14日 ロイター] – 金価格はトランプ米大統領が関税戦争をエスカレートさせるのと歩調を合わせて過去最高値を次々と更新し、11日には現物が1オンス=3245.28ドルと再び史上最高値を付けた。トランプ氏の大統領選勝利直後の昨年11月14日に付けた安値である2536.71ドルからの上昇率は28%に達した。
金はある意味でまさにその本来の機能を果たしており、トランプ氏が「相互関税」の詳細を発表した今月2日以降、投資家にとって金融市場に広がる混乱からの避難先になっている。トランプ氏は中国以外の国について相互関税の上乗せ部分を一時停止したが、投資家の不安を和らげるには不十分で、金融市場が求める安定にはほど遠いものだった。
こうした不透明さは米国債が究極の安全資産としての地位を維持できるのかという重大な疑問にもつながっており、実際のところ米10年国債利回りは先週、週間ベースでは過去20年余りで最大の上昇幅を記録した。
ドルが世界の基軸通貨としての地位を維持できるのか、米国債が最も安全な避難先であり続けられるのかという不安の高まりが金にとって追い風となっているのは間違いない。
<金は人質>
金の問題は他のあらゆる資産と同様に、トランプ氏の気まぐれで一貫性のない貿易・経済政策に左右される「人質」になっているという点にある。
トランプ氏が中国との貿易戦争を継続し、90日間の猶予期間後に相互関税の上乗せ分をまた導入するなら金価格は今後も上昇し続ける可能性が高い。しかし中国との間で「双方のメンツが立つ」妥協が成立し、他国との間でも貿易体制を大きく損なわない形でディールがまとまれば、金を買う理由は薄れる。
問題は、トランプ氏の関税戦争がどのような展開をたどるのか予測するのが、ほとんど「当てずっぽう」に近いということだ。おそらく最も妥当な予測は「事が収まったときに米国が1930年代以来で平均輸入関税が最も高い国になる」ということだろう。これほど高い関税は経済成長を鈍らせ、インフレを加速させそうだ。ただ、その影響は海外よりも米国内の方が大きくなるのではないか。
こうした状況下で金が今後も大幅な上昇を続けるかどうかが問題だ。金は恐怖心からの買いが落ち着き、中央銀行による買いや中国・インドの実需といった、より伝統的な材料が金価格を押し上げる可能性もある。ゴールドマン・サックスが11日に2025年の金価格目標を1オンスあたり3700ドルに引き上げるなど、複数の投資銀行は金相場の上昇を予測している。
<中国プレミアム>
確実に言えるのは、米国債からの資金移動が進めば金の購入が増え、特に世界最大の金消費国である中国でこうした傾向が顕著だろうということ。株式市場の先行きに対する不透明感もあり、中国の個人による金需要は今後も堅調に推移しそうだ。こうした動きは金現物のプレミアム上昇にも反映されており、プレミアムは11日に1オンスあたり39ドルと2016年12月以来の高水準となった。昨年11月のトランプ氏選直後は16ドルのディスカウントだった。
一方、金消費が世界2位のインドは中国と異なり、金は価格高騰で消費者需要が鈍化する可能性がある。実際に国内では消費者の購買意欲の低下を示す兆候が出ており、3月21日には金現物のディスカウントが1オンスあたり41ドルと、8年半ぶりの低水準を記録した。
金の需要を支えているのが「投資家による買い」「中央銀行の買い」「中国とインドの消費者需要」という3本の柱であるとすれば、今は3本全てが金相場にとってプラスに働いている。しかしインドの需要を除くとこれらの柱は全てトランプ氏の政策によって支えられているとも言える。つまり金は安全資産として機能してはいるものの、他の資産と同じようにボラティリティーにさらされるリスクも大きいと言える。
(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

