ロシアは爆薬製造に不可欠な化学原料の納入を受ける予定だ。国際制裁の対象をほぼ免れている肥料会社に発注させる。ブルームバーグが確認した文書でわかった。厳しい経済制裁にもかかわらず、ロシアが軍事力を維持している一例と言える。

  この文書によると、ロシア最大の爆薬メーカーの一つ、スペツヒミヤの傘下企業や工場宛てに、数万トンの硝酸と硝酸・硫酸混合物が発注されている。肥料メーカーのユーロケム・グループとウラルヒムの子会社による注文であることが、文書からは明らかになっている。

  発注された薬品は、ウクライナとの戦争においてロシアに欠かせないトリニトロトルエン(TNT)や火薬、発射火薬などの主要成分だ。だが、ユーロケムとウラルヒムが販売する肥料は農業や世界的な食料供給に重要なため、両社はロシアの軍事努力の妨害を目的とした米国と欧州の厳しい制裁措置をこれまで免れてきた。

  薬品の今年の受取先として文書に記載されている11の工場の多くは、ロシアの戦争努力に貢献しているとして、ウクライナの支援国から制裁を受けている。こうした工場は、民間向けの爆発物も製造している。ブルームバーグは、現在の業務が非軍事目的にどの程度重点を置いているのか確認できていない。

  この計画文書には注文参照番号も書かれており、酸は一部の供給が確認され、年内に順を追って納品される予定であることを示唆している。

  ユーロケムは電子メールで、同社が「世界の食料安全保障の重要な一部」とした上で、「当社の製品は農業と民間産業での使用を目的としている。ロシア経済の防衛部門の一部ではない」とコメントした。

  ウラルヒムはコメントの要請に応じなかった。スペツヒミヤを傘下に持つ、制裁対象の国営複合企業ロステックも、コメントの要請に応じなかった。スペツヒミヤは昨年6月から、欧州連合(EU)の制裁対象となっている。

  EUの執行機関、欧州委員会のデータによると、ロシアは欧州で使われる肥料の約4分の1を供給している。EUはロシアとベラルーシから輸入する肥料の一部に懲罰的関税を導入しようとしているが、食料供給の混乱を避けるため、措置は限定的にならざるを得ない。

砲弾の原料

  米国は25日、ロシアとウクライナがそれぞれ黒海での停戦に合意したと発表したが、ロシア大統領府は、停戦は肥料の輸送を含む農業輸出に関わる銀行や、その他のサービスに対する制裁の緩和が条件になると注文を付けた。

  文書に書かれたスペツヒミヤが今年受け取る硝酸の量に基づき、ブルームバーグが計算したところでは、ロシアは今年、1日あたり少なくとも6500発の152ミリ砲弾を製造できる原料を確保していることになる。2024年に発表された推計によると、ロシアは年間300万-400万発の砲弾を製造または改修する能力がある。

  硝酸と硫酸の混合物は、TNTの製造に使用される。ロシア軍は歴史的に、ロケット推進剤として使用してきた。

  ストックホルム国際平和研究所のマーク・ブロムリー氏によると、EUのサプライチェーンには、依然として大量のロシア産肥料が含まれているという。同氏は「ロシアに科した制裁でロステックやその子会社との取引を阻止できるはずであり、また阻止すべきだ」と述べた。

  ロステックはスイス当局の制裁対象でもあり、ユーロケムはスイスのツークに本社を置く。それでも同社はロシアの子会社を通じ、ロステックの関連工場に約4万トンの硝酸を供給する予定だ。ユーロケムはウラルヒムと合わせ、ロシアの硝酸および硝酸・硫酸混合物の今年の需要の大部分を満たすことが示されている。

規制難しく

  ウラルヒムは、EUが制裁対象に指定した大富豪ドミトリー・マゼピン氏のファミリー企業だ。 ロシアのプーチン大統領は2023年、マゼピン氏に同国で最も古い国家勲章の一つであるアレクサンドル・ネフスキー勲章を授与した。

Day Three of the St Petersburg International Economic Forum 2021

アンドレイ・メルニチェンコ氏

Source: Bloomberg

  ユーロケムは、億万長者アンドレイ・メルニチェンコ氏の一族とつながりがある。同氏は米国、EU、英国から制裁を受け、持ち株会社を通じてユーロケムの株式を所有する信託の受益者から身を引いた。

  両社は窒素系肥料の主要サプライヤーだ。硝酸は主に硝酸アンモニウムの生産に使用され、硝酸アンモニウムは、農業で使われる化学薬品の主要成分だ。

  英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の防衛問題研究員であるニック・レイノルズ氏によると、ユーロケムとウラルヒムは世界の農業において重要な役割を果たしているため、制裁を加えるのは難しいという。

  レイノルズ氏は、硝酸などが「バルクコモディティーであり、規制は非常に難しい」とした上で、「こうした原料への制裁拡大では、ロシアを抑え込める可能性は低い。制裁対象外の場所に、新たなダミー会社が設立されるだけだろう」と指摘した。

原題:Russian Explosive Makers Use Fertilizer Firms to Blunt Sanctions(抜粋)