最後の直撃インタビュー! 今回の「ケイバラプソディー」は、3月いっぱいで競馬担当を卒業する奥田隼人記者が最年少ダービートレーナーの安田翔伍調教師(42)を突撃取材。ダービー制覇後から今に至るまでの心境や心に秘める理想の厩舎像、ダノンデサイル初の海外戦となるドバイ遠征について聞いた。
安田翔伍調教師(2025年1月26日撮影)
-昨年のダービーをダノンデサイルで制し、史上最年少でダービートレーナーに。心境の変化は
全くないですね。変わらずですよ。もちろんダービーは目指すべきものでしたが、実際にそこを目指して馬と向き合ってはいません。ダービーのためだけに入厩させて、新馬戦を組んでと、逆算してるわけではないので。今回はデサイルと向き合う中での過程のひとつで、使ったレースがダービーでした。状態の感触通りに走れたなというのはありましたが、狙っていたレースを勝てたとかそういう達成感はなかったです。ダービーを勝ったからどっしりと構えて厩舎運営をできるかといったら、そんなこともないですし。勝ったことによる変化はないですね。だから次は、違う形で目指したいなとは思いますけどね。ダービーを意識してダービーに行きたいなと。
-ダービートレーナーとなってのプレッシャーは
まずは馬と厩舎というのをメインベースにリズムを作っているので、そこがブレたりすることはないです。実際に馬に乗ったりして結構近い距離で馬と携わっているので、馬から離れて厩舎の全体をというより1頭、1頭に対して近い距離でとなってくると、プレッシャーを感じてる余裕がないですね。だからスタッフと一緒に馬のことで悩んで、少しの課題を克服したり、ちょっとした成長が見られただけで喜んでとか、その繰り返しです。ダービーを勝ったことで、そのリズムが変わったとかもないです。
-昨年に父の隆行厩舎が定年解散。兄の景一朗助手が新たに厩舎へ加わったことなどの変化は
父がトレセンにいた時もそこまで安田隆厩舎の状況というのは把握してなかったですし「よく勝つな」くらいでしたね。今は、僕が父の厩舎で助手をしていた時ぶりに家族みんなでひとつの厩舎を応援してくれているので。それはどこか、懐かしいなという感じがあります。兄の存在は大きいです。僕の逆側に目が付いているような感じで、それまでまだ視界が狭かったのがその分で広がりました。どうしても自分で全頭に乗るわけにはいかないので。安田隆行厩舎で培ってきたノウハウの観点から、僕が乗ってない馬について聞いてみると意見を言ってくれます。それは今までよりも厩舎として濃くなったところで、すごく効率が上がり助かっています。
引退セレモニーで次男の安田翔師(左)と記念撮影に納まる安田隆師(2024年3月3日撮影)
-理想の厩舎像は
理想は、馬で言えばないですね。馬目線で言えばそれぞれの設定したレースを無事に出走させて、より良い結果を求めるというスタイルです。だけど先々の安田翔伍厩舎という意味では、ひとつの例えですが今の矢作厩舎のようにというのはあります。挑戦の仕方がすごいですし、そこに結果が伴っているから世界の矢作厩舎として評価されている。正直、オンリーワンだと思います。ネームバリューは間違いなく日本を代表する調教師で、世界に出られている方なので。中身は違えど、そういうインパクトを与える調教師にはなりたいなと思いますね。それはまた、矢作厩舎とは違ったオンリーワンだったりすると思います。そういう挑戦ができる土台をしっかり作った上で「日本ではうちの厩舎しか」というような結果を残したいです。アイルランドならエイダン・オブライエン、アメリカならボブ・バファートというように、日本=安田翔伍厩舎と世界から見ても名前が挙がるくらいの厩舎にすることが目標です。そのためには国内で結果を出すことも大事ですし、海外のレースもその中の過程のひとつだと思っています。
-ダノンデサイルは昨年末の有馬記念3着後、年明けのAJCCを快勝した。収穫は
AJCCを使ったことの悪影響は何もないですし、ひとつの収穫としてはデサイルのことをまた若干知れたかなと。普通の馬に対してなら引き出しを増やすというのは理想で、僕もデサイルにそのように求めていました。有馬記念の走りを見ても馬体も成長して馬力も強くなっていたので、そういう面では登録していたドバイワールドCでダートという選択肢もあるかもと、またちょっとした引き出しができるかもというのはありました。ただ、AJCCを見た時にデサイルには引き出しを増やすことを要求していろんな条件をこなせる馬にするよりも、この馬がちゃんとパフォーマンスを発揮できる引き出しというのを絞ってあげる方がいいのかなと思いました。そういう面で、この馬のことを少し知れて良かったです。
安田翔師を背に調教から引き揚げるダノンデサイル(2025年3月12日撮影)
-ダノンデサイルにとって初の海外遠征となるドバイシーマクラシック(G1、芝2410メートル、4月5日=メイダン)ではどういうレースを期待するか
レース内容は、枠やメンバーの並びなどが出ないと具体的なイメージというのはまだ分かりません。ただ、僕も助手時代に海外へ行かせてもらって感じたのは、日本の調教というのは世界を追いかけているのではなく、もう世界を引っ張るだけの取り組みをしていて、牧場も厩舎も日本の競走馬に対する人の知識レベルや技術は上がっています。その中で、世界に恥じない取り組みというのはできていると思います。海外遠征では環境が変わり、限られた期間の中でレースへ行くので精神状態も含めてコンディションを乱す馬がほとんどだと思います。だからいかに、日本にいる時に近い状態に持っていけるかが重要だと思います。そのためには日本にいる時の状態を把握することが特に大事なので、ちょっとしたしぐさなども普段から気にかけるようにしてます。
◆安田翔伍(やすだ・しょうご)1982年(昭57)7月8日生まれ。滋賀県出身。騎手だった父隆行さんの姿を見て、競馬界を志す。03年から父の厩舎で厩務員、調教助手を担当。助手時代にはカレンチャン、ロードカナロアなどの活躍馬を手がける。17年に調教師免許を取得し、翌18年開業。同3月4日阪神のオメガパフュームで初勝利。同9月のシリウスSを同馬で重賞初制覇。24年ダービーでJRA・G1初制覇。
(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー~楽しい競馬~」)