コラム:トランプ氏の鉄鋼・アルミ関税、最大の敗者は米国か

 トランプ米大統領は2月10日、鉄鋼とアルミニウムの輸入全てに一律25%の関税を課すと発表したが、これにより最も大きな痛みを味わうのは米国だろう。写真はメキシコ・トラスカラのステンレス鋼製造工場で働く従業員。11日撮影(2025年 ロイター/Hector Lorenzo)

[メルボルン 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] – トランプ米大統領は米国が貿易戦争に簡単に勝てると豪語している。それならば、米国が鉄鋼とアルミニウムに25%の関税を課すと聞いて、英豪系リオ・ティント(RIO.L), opens new tab, (RIO.AX), opens new tabなど海外の鉱業大手は慈悲を乞うはずだ。だが同社とライバル企業の豪BHP(BHP.AX), opens new tabの株主は、既に懸念を一蹴している。

もちろん、株主が楽観的過ぎるのかもしれないし、3月発効予定の関税が結局実施されないと踏んでいるのかもしれない。ただ関税で最も傷付くのは米国だから、という可能性も考えられる。

全ての国を対象とするこの関税は、カナダやメキシコなど主要輸出国だけでなく、小規模な輸出国にも等しく影響を及ぼす。つまり、どこかの国が突如、今までより大きなパイを得られる優位な立場になるわけではない。

この状況が変わる可能性はある。トランプ氏は豪州への適用を免除する可能性を示している。しかし、豪州は米国のアルミ輸入の1.5%しか占めておらず、鉄鋼も似たようなものだ。

A graphic showing the relative stock price changes since January 20 for Alcoa, BHP, Cleveland-Cliffs and Rio TintoA graphic showing the relative stock price changes since January 20 for Alcoa, BHP, Cleveland-Cliffs and Rio Tinto

いずれにせよ、最も大きな痛みを味わうのは米国だろう。米国はカナダに鉄鋼の約4分の1、アルミ輸入の約60%を依存している。これだけの生産能力を補えるのは、最大生産国の中国だけだろう。

ところが関税を課す目的の1つは、中国の「支配」を減らすことにある。確かに、中国の金属輸出は昨年1億1000万トンと、2020年の2倍に増えている。だが米国に直接輸出されたのは、そのうちほんのわずかだ。業界の幹部によると、一部は間接的に輸出されたが、大半は国内でその金属を利用する国に向かった。

しかも、関税のもう1つの目的は米国の鉄鋼メーカーを支えることだ。米鉄鋼業界の設備稼働率は75%前後で、まだ生産を増やせる余地がある。しかしクリーブランド・クリフス(CLF.N), opens new tabなど米鉄鋼株の上昇が短命に終わったところを見ると、投資家は関税の効果に懐疑的なようだ。アルミニウムの見通しはさらに暗い。米国内メーカーによる生産量は65万トン前後だが、輸入はその約10倍に上る。精錬所の増設には多額の資金と5年以上の年月を要する。そして、長期的リターンが得られるとの確証がある程度必要になるが、それはコロコロと変わるトランプ氏の通商政策では提供できないものだ。アルコア(AA.N), opens new tabの株価が下落したのは、恐らくそのためだろう。

つまり、関税による最大の影響は、米国が従来と同じ海外サプライヤーに依存するためにもっと高い金額の支払いを強いられる、ということになる。そうなれば、アルミホイルからカトラリー、風力タービンから自動車に至る最終製品の全ての買い手にとって、物価は上昇するだろう。世界最大の消費者である米国民が、最大の敗者になるだろう。

●背景となるニュース

*トランプ米大統領は10日、鉄鋼とアルミニウムの輸入全てに一律25%の関税を課すと発表した。3月12日に発効する。 もっと見る

*トランプ氏は、2018年に同氏が実施した関税に適用された、カナダ、メキシコ、オーストラリア、欧州連合(EU)、英国などの無関税枠も撤廃するとした。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。