毒虫(ホスト)① http://blog.livedoor.jp/doujimayu-sashimi/archives/49347041.html
 毒虫は死んだ母親の三番目の夫で一年前の冬からこの吉祥寺のマンションに住みはじめた。やつは母が死ぬまでは母としかセックスしなかったが、彼女が死んでからは私と寝るようになった。毒虫は時々くだらないウンチクを披露した。
「お前さあ、ガキってのは人工的にできた概念なんだよ」
「なに、ガイネンって?」
「近代以前はガキなんてなかったんだよ」
「近代ってなに」と私は毒虫に下着を脱がされながら質問する。

「近代ってのは、産業革命後の世界だよ。イギリスで工場ってものが出来て人間様がやる仕事が激減したわけだよ」
「ふううん、それで」
「それまではガキってのは未成熟な年若い大人だったんだよ。だから働いていたし、農村とかでは若いうちからバンバン子供産んでたんだよ」
「だからってあんたが娘を犯していいのかよ」
「まあ聞けよ。それで工場ができて急に仕事がなくなって仕方がないから未成年者にガキっていう新しいニックネームを与えたんだ。それで、ガキから仕事を奪い学校に行かせて、セックスを楽しむ権利を奪ったんだよ」
「ふううん、そうなんだ」
「年齢じゃねえんだよ。セックスしていいかどうかってのは。お前みたいに成熟していて綺麗でセクシーなのは若いうちからやっていいんだよ」
「ホストは口が上手いね」と私は冷めた口調でいった。
「口が上手いってのは、それだけを言うんじゃないぜ」そういったあとで彼は私のパンティをめくってアソコを長い時間かけて愛撫する。私のアソコはなんだか分からない透明な液体でびちゃびちゃになる。
死んだ母はよくいるホストが大好きな巨乳のヘルス嬢だった。彼女は十六で私を産んで最初の夫である父が逃げてからはキャバ嬢とヘルス嬢を一年交代でやりながら私を育てていた。ホストをやっている毒虫とはもちろんホストクラブで知り合い、毒虫は母の貯めている小金を狙って彼女と付き合うことにした。そして最初の出会いから三ヶ月目には同棲を始める。毒虫が同居するようになって半年ほど経った頃に、母が友達と伊豆に温泉旅行にいき、毒虫と二人だけの夜があった。そして母が留守にした二日目の晩に毒虫は私のベッドに潜りこんできた。やつがそうするのは大体予想していたが(母がいないと私の胸をよく盗み見ていたから)、実際に来られると心臓が爆発しそうなくらい動揺した。

「なにするんだよ」と私はとりあえず聞いた
「性教育だよ、性教育」と毒虫は何でもないことのように言った。
「帰ってきたらママに言うよ」
「お前処女なの? その乳のでかさで」と私の言うことを無視して毒虫はヘラヘラ笑いながら言った。
「なんであんたに言う必要ある? 」

「まあ処女だよなあ、ビビってるもんなその顔は」
「別にビビってねえよ」
「お前なんでそんなヤンキー口調なの」
「うるせえよ」
「そうかあ、ヘルス嬢が母親だと尖って生きていかないとなあ。友達にナメられるとつらいか」
「うちのママを馬鹿にするのかよ」
「でも男のチンコ舐めまくってるぜ」
「う、る、さ、い」
「でも俺もババアのマンコ舐めて生きているんだ。お互い様だよな」
「そうだよ、腐れホストが」
「お前はママやおれみたいにジジイやババアの性の道具で終わるんじゃねえぞ」と毒虫はしんみりとした顔でいった。そして何もしないで私のベッドから離れていった。私は少し拍子ぬけする。股間がすごい湿っているのがばれなくてよかった等と考えた。
 母は風俗の仕事が終わって深夜の帰宅途中にひき逃げにあって死んだ。火葬場で母を焼いた後、毒虫は私と一緒に家に帰るとすぐこう言った。
「葬式に金を使うくらいなら、お前に金をやるほうがいいだろ。二百万円あるよ。ママが貯めた金だ」と二百枚の万札が詰まった封筒を私の前に置いて。
「この金狙ってたんじゃないの?」と私はちょっと驚いて聞いた。
「まあ、狙ってたけど、お前も一応俺の娘じゃん。娘の将来は普通心配するじゃん」
「らしくないねえ」
「確かにな、でも、これもって叔母さんとこ行けよ」母には妹が一人いた。
「会ったこともないよ。いるのは知ってるけど」
「でも、肉親だろ」
「にくしんってなに」
「肉親ってのは肉の親って書くんだよ」と毒虫は慈愛溢れる顔で私に言った。母が死んで気丈に振る舞っていたのに、ヤバイと思った。泣きそうになる。
「肉マンで出来たババアとか想像するじゃん」と私は声を震わせて冗談を言った。涙で視界がぼやける。

「訳わかんねえ」と毒虫は下品にせせら笑って私を引き寄せ抱きしめた。よく知らない男性用の香水のいい匂いがした。
「これは父親としてやってるの? 」
「どっちでもいいよ。お前が選べよ」
「じゃあ、父親でお願い」
「あんまり、慣れてないぞ」そういって毒虫は私の後頭部を長い綺麗な指で撫でてくれた。私は彼の固い胸に顔を埋めると安心感を覚えてずっとそうしていたかったが、しばらくして毒虫が私の身体からさっと身をひいた。

「お前胸でかすぎなんだよ、お前と親子ごっこするのってかなり大変なんだよ」と彼は苦笑いして言う。
「腐れホストだねえ」と私は何故か動揺して毒づいていた。頼りにしていた何かに裏切られたような痛い寒々しさを心に感じながら。

「それより、明日にでも叔母さんに連絡するぞ」と毒虫は真顔で言った。私はその言葉を聞いて何故か頭に血が昇った。
「私を見捨てるのかよ」
「……俺とお前で親子ごっこは無理だろ。俺はまだ若造だし、毎日朝帰りだし、お前に欲情することもあるし」
「そんな会ったこともない叔母さんとこなんか、いきたくねえよ」と私は無意味に彼の胸を抗議するように叩きながら言った。
「はあ、じゃあ施設いくか? 」
「ここにいるよ」
「飯とか自分で作れるのか」
「当たり前だろ。作ってもらったことなんかねえよ」

「ふうううん、どうしたもんだか」
「とりあえずこの間言ってた性教育の続きをしろよ!」
「なんだよ、急に」
「親子ごっこが、無理ならさっさとしたほうがいいじゃん」
「お前はガキの皮被った大人だな」
「大体処女じゃないから。前の父親にもう二回やられているから」
「……何歳のときだよ」と毒虫は唖然とした顔で言った。そのつまらない常識的な反応に私はキレた。
「うるせえよ。哀れむなよ。どうせまともじゃねえよ」
「……俺が悪かった」と毒虫は良く似合う銀のメタルフレームの眼鏡の向こうでキレ長の目を細めた。こいつはやはり私の好みだなあ、と改めて思った。
 その晩初めて毒虫に抱かれた。何回もいきそうになった。前の父親より千倍よかった。

「今度上野動物園に新しいパンダがくるだろ」と毒虫が言った。
「……くるね」と私はけだるく答える。まだ腰の辺りに甘い痺れみたいなものが残っている。今は朝の5時半で二人は裸でベッドの上。学校が始まる約二時間前。毒虫の細くて繊細な指が私の髪や首筋をずっと撫でてくれて官能的だ。私は毒虫の痩せた筋肉質な身体にヒルのように張り付いている。ガキなのにもう雌の喜びに目覚めている。

「たまには親子ごっこしに行こうか? 」と毒虫はさりげなく言った。
「親子に見えないし、親子じゃないし」と皮肉をこめて私は言った。でもすぐに後悔。自分でも素直じゃないなと思う。嬉しいくせに。

「じゃあ兄妹ごっこでもいいから、連れてってやるよ」と毒虫はめげないで言った。
「ふううん、何かガキっぽいよね、動物園って」
「でも甲斐はガキだろ」
「そういうのって人工的に作られた概念だって言ったのはあんただよ」
「よく覚えているな。いい生徒だ」と毒虫は私の頭をなでてくれる。やっぱり嬉しい。こいつに月二百万円も貢ぐババアたちの気持ちが少しわかる。見た目も良くて口も上手く、おまけにその場の空気を官能的に変える魔法を持ったオスに雌は弱い。それは年齢も時代も全く関係ないのだろう。
「でもチャラい、ホスト風の格好してきちゃだめだよ。職質されるよ」と無用な忠告をする私。頭のいい毒虫がそんなことするはずないのに。

「馬鹿、真面目なリーマンの休日みたいな風情でやるよ。バーバリーとか無難なの着込んで」
「ふううん」と私はつまんなそうな態度を変えない。小さい頃からろくな事がなかったので、何か無邪気にはしゃぐと神様がその喜びを取り上げにやって来ると疑っているからだ。

 もし天国というものがあり死んだ母がそこから下界を見下ろしていたら、さぞかし悔しがっていることだろう。私は彼女の最愛の年下の男を引き継いだのだから。毒虫は戸籍上私の父だが、やっていることは私の男でしかない。親らしいことは一切しない。その反対のことしかしない。つまり娘であるわたしを毎日犯す。毎晩朝方に帰ってきてシャワーを浴びたあと寝室にやってきて私の身体からパジャマと下着を性急に剥ぎ取る。そして疲れているからたいした前戯もしないで、すぐに私の中に入ってくる。私はそれが楽しみで、母が生きてた頃はよくテレビを見ながら夜更かししていたが、最近は早く寝るようになった。だってテレビを見るくらいなら早めに寝て体力を蓄えて毒虫の身体を迎え入れるほうが喜びは深い。それに毎晩不規則な生活をしている毒虫の身体が心配なので、毒虫のために手作りの