「刑事事件としては分からなかったこと、公にできなかったことを見て頂けた。それがこの裁判で得られたことです」。ジャーナリストの伊藤詩織氏が望まない性行為を受けたと認めた12月18日の東京地裁判決。判決後に都内で会見した伊藤氏は、刑事事件と異なる結果になったこの日の判決の意義を語った。
 伊藤氏は2017年、実名と顔を公表して会見し、自分の体験を明らかにした。「性暴力被害者をとりまく社会的な状況を改善したいと思った」と当時を振り返った。提訴後に自分と同じような境遇の人に会う機会が増えたといい、「自分の真実を信じてほしい。私もそれを貫いて今日の結果がある」と呼びかけた。
 訴訟の終盤には、新たに当日の状況を目撃していたホテルの関係者から証言を得られたという。「密室での出来事で、目撃者などの第三者の協力が大事。社会全体で自分事だととらえてほしい」と話した。
 この件をめぐっては、伊藤氏は警視庁に山口氏を告訴して捜査されたが、不起訴になった。伊藤氏は「逮捕されていたら、もっと証拠も集まっていたかもしれない。逮捕しなかった理由を説明してほしい」と捜査当局側に改めて求めた。
 山口氏は控訴する方針を示している。伊藤氏は山口氏に対しての思いを問われ、「どうしてこうなったのか、一緒に向き合ってくれたらうれしい」と言及。「これで終わりではない。傷は癒えない」とも話した。