(CNN) 「アイスマン・エッツィ」の愛称で知られる5300年前に死亡した男性のミイラは、保存状態が良いことで知られる。今回新たな研究によって、エッツィが微生物の「動的生態系」となっていることが分かった。本人から検出された一部の微生物は、数千年にわたって生存能力を維持しているという。
ミイラ化したエッツィの内外に存在する微生物を包括的にDNA解析した結果、科学者たちは複数の真菌種について、エッツィが死亡した寒冷な山岳環境と結び付くことを突き止めた。これらの真菌はおそらくエッツィの遺体に定着し、そのまま凍結したと考えられる。真菌は休眠状態にありながらも本来持つ耐寒性によって生存し続け、数千年が経過しているにもかかわらず再び活動する能力を維持しているという。学術誌「マイクロバイオーム」に先週掲載された研究で明らかになった。
実際、一部の微生物は「単なる休眠状態の遺物ではなく」、わずかな水分が存在するミイラ内部の微小な空間でゆっくりと増殖している可能性がある。研究著者らはそう報告している。このような成長は太古の遺骸における微生物の寿命が従来考えられていたよりも長く、活動性も高い可能性を示す。この点は、そうした遺骸を保管し、取り扱う上で考慮されるべきだと研究は指摘している。
科学者たちの仮説によれば、エッツィが極寒のエッツタール・アルプスで息を引き取ったとき、人間の同行者はいなかった。しかし、エッツィは本当の意味で一人ではなかった。生前の体内には何兆もの微生物が存在しており、死後も遺骸にとどまったからだ。その中には、エッツィの死亡した場所に由来する微生物も含まれていた。
「我々はエッツィの体内に保存されていた太古の腸内細菌を特定した。これらは今日の近代的かつ工業化された生活様式を送る人々の間では極めてまれだが、伝統的かつ非工業化的な生活様式を維持している人々の中では、今なお見つけることができる」と、本研究の上級著者であるフランク・マイクスナー氏はCNNへの電子メールで語った。同氏は研究が行われたイタリア・ボルツァーノにあるミイラ研究所の所長を務める。

5300年前に死亡した「エッツィ」の再現画像/Augustin Ochsenreiter/South Tyrol Museum of Archaeology
科学者たちにとって、エッツィの微生物はエッツィ本人と同じくらい興味深い存在だ。それらはエッツィの微生物叢(そう)や健康状態についての手掛かりを提供するとともに、太古の環境における微生物群の多様性にも示唆を与える。
しかし、保存された有機遺骸に関しては、微生物が問題を引き起こすこともある。何千年もの間、氷河の氷と凍結した気温が、エッツィの遺骸と微生物を劣化や腐敗から守ってきた。エッツィは1991年、オーストリアとイタリアの国境沿いでハイカーが発見。遺骸はボルツァーノの南チロル考古学博物館に保管され、マイナス6度、相対湿度99%の環境で凍結保存された。これらの条件は、エッツィが発見された氷河内の環境とほぼ同じだった。
しかし最近、科学者たちはこの保存戦略が本当に微生物の活動を抑制しているのか疑問を抱くようになった。というのも、ある種の微生物は極めて低温の環境でも繁殖することが知られているからだ。さらに実際のミイラの取り扱いを通じて、現代の細菌や真菌による汚染の可能性も浮上する。そうした事態は微生物の構成状況を一段と分かりにくくする。