「AIファースト」の成否は誰が握る? 導入が失敗する理由 – ZDNET Japan

 AIの導入が企業の競争力を左右する局面に入り、「AIファースト」を掲げる企業が急速に増えている。しかし現実は、概念実証(PoC)止まりや部門単位の実験にとどまり、全社的な変革に至らないケースが多い。ここで問われているのは、技術力そのものではなく「誰が全体を動かすのか」という統治の問題だ。

 従来のIT投資は、例えば現場部門がSaaSを導入し、個別最適を積み上げる形でも一定の成果が出た。しかしAIは性質が異なる。データは部門を横断しなければ価値を生まず、モデルの精度や活用範囲も全社的な設計に依存する。部分最適のままでは、むしろコストとリスクだけが増幅する。だからこそ「AIファースト」は、ツール導入ではなく経営課題になる。

 このとき鍵を握るのが、全体責任者の存在だ。いわゆる最高AI責任者(CAIO)や最高データ責任者(CDO)がそれに当たるが、重要なのは、データ戦略や業務変革、人材育成、ガバナンスを横断し、意思決定できる権限と責任を持つかどうかだ。

 逆にこの役割が不在の企業では、各部門が独自にAIを導入し、データは分断し、言語モデルが乱立する。結果的に精度は上がらず、セキュリティやコンプライアンスのリスクも高まる。IT部門が後追いで統制しようとしても、「野良AI」が広がった後では手遅れになりがちだ。

 例えば、MicrosoftにおけるAIの展開は、「統括リーダーの存在」が成果を左右する典型例である。同社は「Copilot」を単なる機能追加ではなく全社戦略に位置付け、製品横断で一貫した設計を進めている。これは個別部門の判断では成立せず、経営レベルで「どこにAIを組み込み、どの業務を変革するか」を決めているからこそ可能になっている。結果として、ユーザーはアプリ単位ではなく業務単位でAIの価値を享受できる。

 ServiceNowも同様に、AIを全社ワークフローの中核に据えることで評価を高めている。同社はIT運用、人事、カスタマーサービスといった領域を横断し、「業務の流れそのもの」をAIで最適化する方向に舵を切った。ここでも重要なのは、個別機能の強化ではなく、全社プロセスをどう再設計するかという意思決定が先にある点だ。

 AIファーストの本質は、技術選定ではなく組織設計にある。どの業務をAIで変革するのか、そのためにどのデータをどう整備するのか、そしてどこまで自動化を許容するのか。これらは全て経営判断であり、全社最適の視点なしには決められない。だからこそ、AIファーストを掲げる企業にとって最も重要なのは、「誰がその全体に責任を持つのか」である。AIファーストに関連する記事を集めた。

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