Google I/Oで埋もれた重要発表 がん治療などの研究をAIで加速する「Gemini for Science」(CNET Japan)

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 気候変動によって異常気象の予測がこれまで以上に難しくなり、米政府が米海洋大気局(NOAA)の予算を削減する中、Googleはハリケーンの進路を予測して早期警報システムの整備に役立てようとしている。さらに、森林破壊や食料不安への対策に向けて地球のデジタルツインを構築しているほか、免疫疾患やがんの治療を含む複数の医療プロジェクトを前臨床段階で進めている。

 インターネットの粗悪化が進み、大量失業の脅威も迫るなか、AIが存在すべき明白で高潔な理由がいくつかあることを、われわれはつい忘れてしまいがちだ。もちろん、そうした取り組みが明白に利益を生むわけではない。それでも、Google I/Oの議題の中で単なる付け足しのような扱いにとどめられてよいはずがない。

 Googleが最後のわずかな時間で「Gemini for Science」に言及したのは、世界の大半が求めてもいないAIモデルの小幅な改良について100分以上語った後、少しでも前向きな印象を残そうとしたからなのかもしれない。しかしそれ以上に、基調講演の大半を占めた検索、ショッピング、生成AIツールと比べて、Googleがこの取り組みをいかに軽視しているかを示している可能性の方が高い。

 これは見落としのように思える。この取り組みが道徳的な優先事項であるべきだからというだけでなく、シリコンバレーの外ではAIが必ずしも万人に愛されているわけではないからだ。AIが人類に真の利益をもたらすことを示すことは、多くの人が懐疑的で恐怖さえ抱いているこの技術の評価につながる可能性がある。

 Googleは、AIがパーティーを計画してくれることに人々が興奮することを望んでいるのだろうが、それはなかなか難しい注文だ。多くの人は、近所にAIデータセンターが建設されてパーティーが台無しになる可能性の方を心配している。

 しかし、人々が本当にAIに期待するきっかけになるものは何だろうか。それは、がんを完治させるか、少なくとも今より効果的に治療できる可能性だ。

 私は長年にわたり、Hassabis氏のインタビューを数え切れないほど読み、イベントで話す姿も見てきた。医療への貢献のためにAIを追求することこそが、同氏の真の情熱が注がれる場所であることは明らかだ。

 同氏はGoogle I/Oで「私は常に、AIの第一の応用先は人の健康を改善することであるべきだと信じてきた」と語った。同氏はノーベル化学賞を受賞し、創薬のための新しいツールを切り拓いてきた人物であり、現代の健康課題を解決するためにAIを役立てようという真に高潔な意志を持っていると私は信じている。

 それだけに、Googleが同氏を登壇させ、人類にとって明らかな利益が見当たらない新しい動画生成AIモデルを発表させたことには疑問を抱かざるを得ない。将来、Hassabis氏は誰もが知る名前となり、この世代で真に影響力のある科学者の一人として称賛されるかもしれない。しかし、そのためには彼自身の取り組みに専念させ、われわれ全員が重要だと認める物事へとその才能と情熱を向けさせる必要がある。

 もしHassabis氏がその使命を果たせば、Googleもまた称賛を浴びることになるだろう。科学への資金提供がかつてないほど困難だった時期に、同氏のブレイクスルーに資金を提供したとして、いつか評価される日が来るかもしれない。しかしそのためには、四半期ごとの決算に追われるのではなく、長期的な視点に立つ必要がある。莫大な資金を必要とする一方で、株主への利益はほとんど、あるいは全くもたらさない、人類の利益のための取り組みを優先する覚悟が求められるのだ。

 Googleは、Hassabis氏のチームがDeepMindやIsomorphic Labsを通じて進めている取り組みを大々的にアピールすべきであり、スマートフォンのショッピング機能よりも優先すべきだ。Gemini for Scienceこそが主役であるべきで、付け足しであってはならない。

この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。