J.S.バッハ:最愛のイエスよ、我らここに集いて BWV.731
♪バッハ自身が6度の編曲を重ねた美しいオルガン・コラール

バッハは作曲の題材として好んでコラール(讃美歌)を取り上げていました。
前回のカンタータ第140番や同じくカンタータ147番などもそうです。

これらの場合、元のコラール旋律はそのまま残しつつ、
それを装飾する対旋律などで劇的に盛り上げています。
むしろバッハの作った伴奏的な対旋律の方が、遥かに華やかでいいぐらいです。

そして今回のオルガン・コラール「最愛なるイエスよ、我らここに集いて」も、
同名の讃美歌21-51を題材に編曲された作品です。
バッハはこのコラールを気に入っていたらしく、計6回の編曲が施されています。

作品としてはBWV373/633, 634/706/730, 731 ということになります。
それらは番号を追うごとに変化を重ねていて、
最後のBWV731では最早、原型の讃美歌の痕跡がまったく見られないほどです。
元の讃美歌は誰もが歌えるようなシンプルで親しみやすい小品ですが、
バッハはこれに少しずつ手を加え、旋律を変え、伴奏に色を添え、
まったく見違えるような高貴で、芸術的な作品に仕上げています。

このことからバッハが編曲家としても優れていたことに加え、
何より作曲家として美しい旋律を紡ぐことに長けていたのがよくわかります。
現代のポップスにも通じるような作曲、編曲の原点を、
バッハは200年以上も前にすでに自分のものとし、極めていたのです。
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